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裁判員制度を考えるL〜裁判員裁判体験記4
はじめての裁判員裁判
12月8日午後1時30分からはじまった審理は、翌9日の午後5
時まで、ほぼ事前に予定されたとおり進行しました。
審理を通じて、弁護人からみた事件の性格(思いもよらない不幸な
事件)、行為の危険性(1回顔を殴ったということ)、結果の偶発性、
Aさんの人柄、反省の態度などについては、裁判員と裁判官に十分伝
わったのではないかと思います。
とくに、Aさんに対する質問(被告人質問)は、裁かれている本人
というだけでなく、事件の全体像とAさんの人柄を裁判員に理解して
もらう上で重要でした。やはり、法廷の主役は本人だとあらためて感
じました。
検察官の最終意見(論告)は、Bさんが亡くなったという重大な結
果を生じたことなどをあげて、5年の懲役が相当という意見でした。
主任弁護人の古川弁護士の最終意見(弁論)は、裁判員が刑の重さ
を判断する上で頭をよぎるであろう事柄にすべて言及したもので、圧
巻でした。思いもよらない不幸な事件であるという事件の性格が審理
を通じて理解されたことを述べ、傷害致死という重大な事件でも執行
猶予になることが相当数あることを最高裁の量刑データを示して明ら
かにし、司法という権力は抑制的に行使されるべきことを指摘した上、
審理によって明らかになると様々な有利な事情を確認する内容です。
約30分、書面を読み上げるのではなく、証言台の前に立ち、裁判
員、裁判官とアイコンタクトを取りながら、パネルやホワイトボード
を使い、法律が定めた刑の下の方でかつ執行猶予がふさわしい事件で
あることを明らかにしました。テレビのワイドショーで見かけるよう
な手法ですが、見て聞いてわかる審理の集大成でした。
同僚が言うのも何ですが、とにかくうまいの一言です。
弁護士 高 山 利 夫

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