1. 女性弁護士の法律コラム

女性弁護士の法律コラム

 
(女性弁護士の法律コラム NO.149)
 
11月8日は、神戸で、日本弁護士連合会主催の「業務改革シンポジュウム」が開催されたので、参加しました。
神戸は久しぶりでしたが、どこへも寄らず、結局、会場と事務所の往復だけになりました。
 
7つの分科会がありましたが、私は「SNSと弁護士との関わりについて、情報漏洩対策」の分科会に参加しました。
 
実は、これまで、何人かの人から「村松先生は、ツイッターやフェイスブックはやらないの?」と聞かれたことがありました。
公開されている方のツイッターやフェイスブックをパソコンのインターネットで読んだりはしているのですが、自分からそれらをする意味があまり感じられないできました。
それで、この分科会で何かそれらの「意味」が見つかるかもしれないと思い、参加してみました。
 
報告者は、ツイッターは「ちらし」のようなもので、フェイスブックは「名詞」のようなものと例えていました(よく、わかりません)。
色々、メリット、デメリットの説明がありましたが、所詮、アナログ人間の私には、新たな意味を発見することはできませんでした。
 
たまたま私の隣に座っていた若い女性弁護士は、シンポジュウム中、ずっとパソコンをうち続けていました。
横目で覗くと、ツイッター中。
名前を読むこともでき、「おや、おや、彼女があのツイッターの主だったのか」とわかりました。
帰宅後、彼女のツイッターを読むと、リアルタイムでシンポの書き込みがなされていました。
さすがです。
 
 

 
(女性弁護士の法律コラム NO.148)
 
10月27日の日曜日、弁護士会の両性の平等に関する委員会と犯罪被害者支援委員会との合同で、ウィメンズセンター大阪とSACHICOの訪問と見学をさせていただいた。
 
午前は、大阪市阿倍野区にあるウィメンズセンター大阪を訪問し、お話を伺った。
女性が自分のからだや性にまつわる不安や悩み、社会の中での生きにくさを率直に語り合い交流する場として、1984年に結成された。
子宮筋腫の手術をするべきかどうか、月経不順や中絶問題あるいは性について考えたいなど、電話相談(無料)や面接相談(有料、要予約)を行っている。
研修を受けてスキルアップした相談員を配置するなど、相談者の立場に立った運営をされている。
SACHICO発足以降は、その事務局団体にもなっている。
 
ともすればタブー視される「性の悩み」に正面から応えようと日々工夫や努力をされており、長年にわたりねばり強く取り組みを続けてこられたことに本当に感服した。
 
午後は、大阪府松原市の阪南中央病院の中にある性暴力救援センター・大阪「SACHICO」の訪問。
2010年4月発足。
支援員と産婦人科医師(すべて女性)が24時間対応し、主には、性暴力被害にあってまもない(7日以内)の女性への総合的支援を提供する。
具体的には、緊急避妊対策によって妊娠を回避すること。外傷の診察、妊娠への対応など。そして心のケア。
また、過去の被害に悩んでいる女性については、カウンセリング等も紹介している。
更に、加害者対策として、カルテの保管や証拠採取なども行われている。
365日毎日24時間のホットラインをつないでいること自体、想像どおり、関与されている方々の献身的努力なしでは、成り立たないことを実感した。
産婦人科医師との協力・連携も不可欠だ。
 
年間の電話相談件数は約4000件にも及ぶ。
性暴力被害にあった女性たちの多くは、恐怖と屈辱と混乱の中で「誰にも言えない、知られたくない、考えたくない」と一人で悩む。
それは、その被害女性の心身のみならず、生活、さらには人生までをも変えてしまうこともある。
 
「SACHICO」のような性暴力被害者救済センターが全国各地で設置されることが求められるとともに、性暴力のない社会を実現するにはどうすればよいか考えていかなければならないと強く感じた1日だった。
 
※ウィメンズセンター大阪:06-6632-7011(月から土曜10:00~17:00)
※「SACHICO」24時間ホットライン:072-330-0799
 
 

京都労働局の雇用均等室との懇談会

 
(女性弁護士の法律コラム NO.147)
 
本日午前は、京都弁護士会の両性の平等に関する委員会と京都労働局雇用均等室との懇談会があったので、出席した。
 
均等室は、京都労働局(中京区両替町通御池上る)の建物の5階にある。
均等室では、労働者と使用者との間で、男女差別、セクハラ、育児・介護休業、パート問題などの紛争が生じた場合に、解決に向けた援助をしてくれる機関である。
 
相談件数としては、セクハラに関するものが一番多いようだが、やはり、最近では、妊娠・出産等による不利益取り扱いの相談も増加しているとのことであった。
 
企業に対する行政指導もされているが、何せ、職員が5人しか配置されていないとのことで、小企業までは手が回っていない。
ただ、相談や申告があれば、指導に入ると言われていたので、法違反の疑いがあれば、どんどん申告することが大切だと感じた。
 
簡単な手続きで迅速な解決を図りたい場合には、均等室に援助の申し出を行い、均等室が調査した上で、局長による助言などの援助を受けることができる。
また、第三者機関に援助してもらいたい場合は、均等室に調停を申し立て、調停委員が紛争解決にあたる方法もある。
この調停手続きは、年に1件利用があるかないかとのことで、以前から、ほとんど利用されておらず、もっと利用し易くしなければ、法が手続きを定めた意味がないと思った。
 
最近、頻発しているマタニティーハラスメントの相談等も含め、もっと、気軽に均等室を利用してほしいと思う。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

会社から離職票がもらえない

 
(女性弁護士の法律コラム NO.146)
 
「会社を退職したのに、離職票がもらえません」そんな法律相談を受けました。
 
何十年も働いてきたのに、ちょっとしたミスを理由に退職勧奨を受け、退職したAさん。
聞けば、結構、京都では名前が知れた会社でしたが、ノラリクラリと離職票をくれないとのこと。
Aさんは、長年働いてきた会社を辞めざるを得なかったこと自体ショックを感じておられた上に、離職票をもらえないということで、とても落ち込んで見えました。
離職票がなければ、雇用保険の手続きが受けられず、失業手当ももらえません。
雇用保険に加入しているのに、会社が離職票を渡さないのは、怠慢か嫌がらせしかありません。
 
以前にも、同じような相談が受けたことがあり、その時は、私物も返してもらえないということでしたので、受任して、弁護士名で、離職票や私物を引き渡すよう内容証明郵便で請求したところ、すぐに返してきたことがありました。
 
今回の相談は、離職票だけでしたので、ハローワークへ行けば、会社に指導してもらえるとアドバイスをしました。
 
後日、Aさんから報告があり、ハローワークから会社に指導があり、離職票は交付されたとのことでした。
 
このような嫌がらせにめげず、明るいAさんに早く戻ってほしいと思いました。
 

日弁連人権擁護大会in広島

 
(女性弁護士の法律コラム NO.145)
 
10月3-4日、日本弁護士連合会の人権擁護大会とシンポジュウムが広島で開催されたため、参加してきました。
3日がシンポジュウムで、4日が大会。
 
シンポジュウムは、第1分科会が原発問題、第2分科会が憲法9条問題、第3分科会が労働と貧困問題がテーマでした。
どの分科会もホットなテーマだったので、どれに参加するか迷いましたが、第3分科会に参加しました。
 
ジャーナリストの斎藤貴男さんの講演は、消費税が来年4月に8%に引き上げられても日本経済が回復することがないことなどわかりやすいアベノミクス批判でした。
また、匿名で発言された母子家庭のAさんの生活実態の話は、今の日本の貧困問題がとりわけ女性や子どもに大きくのしかかっていることがリアルに伝わってきました。
パネルディスカッションのパネラーの一人だった東京大学名誉教授の神野直彦先生の「『国の財政が破たんする』なんて、僕が大学院生の時からずっと言われ続けている」「日本の財政は、破たん状態じゃない」「社会保障に金をもっと使えば、日本の財政は豊かになる」などという発言は、もっと詳しく聴いてみたいなと思うような内容でした。
 
その日の夜の京都弁護士会会員の懇親会で話を聞くと、他の分科会もかなり充実した内容だったようで、分科会の「ハシゴ」をするんだったと少し後悔しました。
 
以下は、番外編です。
お昼に食べた広島焼きです。
とろろいもと溶ろけるチーズをトッピングしました。
 
 

 
 
 
 
 
 

過労死弁護団総会に参加してきました。

 
(女性弁護士の法律コラム NO.144)
 
過労死弁護団全国連絡会議の総会が、9月27ー28日の両日、大阪で開催されましたので、参加してきました。
 
全国各地で、過労死や過労自殺などの労災や公務災害としての認定を求める裁判や企業に対し損害賠償責任を求める裁判がたたかわれています。
総会では、そのような裁判の報告や経験交流などがなされました。
 
特に、もともと何らかの精神障害を抱えていた労働者が業務によりその障害が悪化したようなケースをどのように考えるか、過労自殺の場合の任意保険金の請求問題など、新しいテーマについても議論され、とても勉強になりました。
 
今後の仕事に役立てていけたらと思いました。
 
 

秘密保護法案、藤原紀香もブログで反対!

 
(女性弁護士の法律コラム NO.143)
 
「秘密保護法」という法案が、10月15日から始まる臨時国会に提出されるという動きがあることをご存じだろうか?
第2次安倍政権は、「成立をめざす」としている。
 
秘密保護法案とは、国にとって特に重要な情報を「特別秘密」に指定し、その特定の秘密を漏らした公務員や、不正な手段で公務員らから秘密を入手した人を処罰するものである。
 
ずっと以前から「国家秘密法」などという名前で、時の政府が法案提出を画策してきたが、いずれも国民の反対にあい、頓挫してきた。
ところが、2010年に起きた尖閣諸島沖での中国漁船衝突ビデオ映像が流出したことがきっかけとなり、議論が再開された。
 
藤原紀香は、9月13日付けの自身のオフィシャルブログで秘密保護法案への危険性を表明した。
「国が『この案件は国家機密である』と決めたことに関しては、国民に知らされないことになり、放射能汚染、被爆などのことや、他に、もし国に都合よく隠したい問題があって、それが適用されれば、私たちは知るすべもなく、しかも真実をネットなどに書いた人は罰せられてしまう・・・なんて恐ろしいことになる可能性も考えられるというので、とても不安です」
 
法案の「秘密」の範囲は、「防衛」「外交」「外国の利益を図る目的で行われる安全脅威活動の防止」「テロ活動防止」の4類型。
でも「原発」に関する情報だって「テロ活動防止」と言ってしまえば含まれてしまうし、そもそもチェック体制がないから、行政が「この情報はテロ活動防止に関する情報にあたる」として特定秘密にしてしまえば、本当はそれにあたらない情報でも、特定秘密になってしまう。
 
政府は、9月3日から、広く国民から意見を聞く「パブリックコメント」の受付を開始したが、期限が17日(明日です!)と、こんな重要な法案であるにもかかわらず、わずか15日間しかないため、「国民にも意見を求めましたよ」というアリバイ作りであることは明らか。
藤原紀香は「私も自分の意見、パブコメに送らせていただきました」と書き、パブコメの送り方まで紹介している。
 
国民の知る権利を奪う秘密保護法案。
私たち日本の将来を守るため、一人一人が声をあげよう。
 
なお、法案の問題点については、日本弁護士連合会のホームページに意見書が掲載されていますので、それも参照してください。
 
 
 

子どもの前での「面前DV」

 
(女性弁護士の法律コラム NO.142)
 
今年1~6月に心理的虐待を受けたとして、全国の警察が児童相談所に通告した18歳未満の被害児童は5670人で、上半期としては過去最多だったことがわかった(2013年9月12日付け京都新聞)。
 
うち、子どもの目の前で配偶者や親族らに暴力をふるう「面前ドメスティック・バイオレンス」の被害が3840人と67.1%を占めた。
 
子どもの目の前で、「産まなければ良かった」「殺すぞ」と暴言を吐いたり、配偶者に暴力をふるったりすれば、子どもに大きな精神的ショックを与えることは間違いない。
 
多くの研究で、暴力を目撃した子どもは後遺症に後々まで苦しみ、人間関係を築いたり、攻撃的な衝動を抑えたりする能力が欠如しているという結果が出ている(ジュディス・ウォラースタインほか著「それでも僕らは生きていく」より)。
 
どのような理由があろうと、暴力は絶対に認められない。

コンビニの「見切り販売」

 
(女性弁護士の法律コラム NO.141)
 
2013年8月30日、コンビニエンスストア最大手「セブンーイレブン・ジャパン」から、販売期限の迫った食品を値引きする「見切り販売」を妨害されたとして、加盟店主4人が計約1億4000万円の損害賠償を求めた判決で、東京高裁は、計約1100万円の支払いを命じました(毎日新聞)。
 
公正取引委員会は、2002年に「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方について」という指針で、値引きの制限を禁止しています。
そして、公取委は、値引きを認めなかったセブンーイレブンに対し、2009年6月、妨害を禁じる排除措置命令を出していました。
セブンーイレブンは、表向きは「加盟店の判断」としているとのことですが、実際には、本部への報告や相談義務があり、値引きが行いずらい状況になっていたようです。
実際、公取委が排除措置命令を出してからの4年余りの間で、見切り販売を実施しているコンビニは、セブンーイレブンでは加盟店舗の1%にも満たない状況です。
 
判決は、「店主は社員から『見切り販売したら店は続けられない』などと言われて取りやめを余儀なくされており、事実上、強制的な妨害があった」と認定しました。
 
いわゆるコンビニ会計という、売れ残りによる商品廃棄や万引きによる損害は、その大半を加盟店がかぶる処理方法が問題です。
更に、日本では、世界の食糧援助量の3倍以上、年間2000万トン近い食品廃棄物が生み出されています。
コンビニでは、1店あたり年間20~30トンが廃棄されているとも言われます。
 
「24時間営業」でも、弁当などの食品に「賞味期限」がある以上、「見切り販売」はあってしかるべきです。
他方で「餓死」事件が後を絶たないこの日本で、大量の食品を廃棄するなど、とんでもない話です。

 
(女性弁護士の法律コラム NO.140)
 
7月26日、京都弁護士会の両性の平等に関する委員会で、大阪ファミリー相談室の見学に行ってきました。
 
大阪を含め全国10カ所にあるファミリー相談室(FPIK=エフピック)は、元家庭裁判所の調査官が中心となって平成5年3月に設立された民間団体で、現在は、とりわけ、子どもの面会交流の援助機関として利用されています(有料です)。
 
両親が離婚した場合、子どもと非監護親との面会交流は、父親と母親との共同作業と言えますが、DVなどが原因で離婚したような場合、自分たちだけで面会交流を行うことが困難な場合もあります。
そのような場合に、FPIKの援助を得て、面会交流を行うことができます。
 
援助の期間は、原則1年で、その間に、両親が自分たちだけで面会交流が実現できるようになることを目指しています。
 
大阪の場合には、ビル内に3室のプレイルームがあり、そこや外部の公園などを利用して面会交流を実施します。
FPIKの援助者が付き添う場合と面会交流の始まりと終わりに子どもの受け渡しだけを行う場合とがあります。
 
担当者の方からお話をお伺いしましたが、経験豊富な元調査官の方々だけあって、離婚した親同士が子どもの面会交流をスムーズに行えるよう努力されていることを実感しました。
 
京都の人でも気軽に利用できると良いのですが、大阪まで行かなければならないという難点があります。
京都でも面会交流に適当な部屋があれば、大阪から援助者が来てもらえるという話もあり、是非、京都にもそのような場所ができればと思いました。

 
(女性弁護士の法律コラム NO.139)
 
ミニバイクの速度超過で運転免許を減点されたのは誤りだったとして、京都の男性弁護士が京都府を相手取りゴールド免許の交付を求めた訴訟の控訴審判決が6月27日大阪高裁であり、「測定されたのが他の車両の速度だったという可能性も十分ある」などとして、訴えを棄却した1審判決を取り消し、逆転勝訴の判決を言い渡した(2013年6月28日付け朝刊各紙)。
 
すごい!
当事者である弁護士とその代理人の弁護士に大きな拍手を送りたい。
 
警察のレーダー式速度測定器による取り締まりに不満を持っているドライバーはきっと全国にたくさんいるだろう。
先日、古屋国家公安委員長が指摘したように、警察が最重点ではない場所や危険のない場所で速度取り締まりを行っている、という取り締まりの場所の問題が1つ。
 
それと、そもそもレーダーというのは、本当に正確に測定できるんだろうか?ということ。
 
測定原理は、路側に置いた測定機からマイクロ波を走行車両に投射し、車両からの反射波が車両の速度に比例して偏移するという「ドップラー効果」を応用したものである。
 
この測定で誤差が生ずる原因として様々なことが考えられる。
機器そのものについて言えば、測定機内部の雑音、測定用電波でない外部の電波・雑音によるもの、測定用電波の性質そのものがあげられる。
また、そのほかにも、警察の取り扱い方法上のミス、対象車両の誤認などが考えられる。
 
機器そのものの原因を論ずる能力は私にはないが、実は、警察がレーダーのしくみを知らないまま操作することによる誤測定はかなりあるのではないかと思っている。
 
複数車両が走行している場合、レーダーに表示されるのは速度の数字だけであるから、その数字がどの車両から跳ね返ってきた数字かを特定するのは、人間である警察官なのである。そして警察官は往々にしてレーダーのビームは1本の直線で投射されていると思いこんでいる場合が多く、実はレーダービームには幅があることを認識していない。
 
だから、レーダーの取扱説明書には、複数車両が集団で走行してくるような場合には、測定してはいけないと書かれてある。
そのため、裁判になると、実際には複数車両が存在したような場合でも、警察官は「単独走行だった」と口裏を合わせて証言するのである。
 
今回の裁判でも、警察官はバイクの前後50メートルには車両はなかったと証言したようだが、裁判所はその証言を信用せず、「超過とされた速度は、近くを通過した別の車の車両の速度である可能性も十分ある」と指摘した。
 
実は、私は、弁護士になって5年くらいの時期に、当時、タクシーの労働組合の顧問をしていたこともあって、何件かの速度違反の刑事事件で無罪を争ったことがあった。実際に路上で現場検証したこともあった。
文系出身の私にはかなり難解なレーダーのしくみにぶち当たったため、元レーダー開発の技術者の方などの協力も得て取り組んだが、無罪判決は取れなかった。
 
今回は、民事事件とは言え、立証は決して容易ではなかっただろうと想像する。
京都府は、おそらく上告しない気がするが、もし上告されたら、大弁護団を作って、徹底的に争ったらよいと思う。
 
 

 
 
(女性弁護士の法律コラム NO.138)
 
久しぶりに映画を観て泣いた。
「約束」。
三重県名張市で1961(昭和36)年3月に起きた毒ぶどう酒殺人事件の死刑囚奥西勝さんの生涯を追った映画。
京都シネマでの上映は6月13日までなので、急いで観に行って来た。
 
名張毒ぶどう酒事件は、未だ再審の扉があかない死刑冤罪事件として有名である。
映画「約束」は、事件発生から現在までの奥西さんの生涯を、俳優による演技と、長年にわたり東海テレビが取材し保有していた実際の映像などを織り交ぜて構成された作品で、事件そして裁判の流れがよく理解できた。
 
奥西さんを演じた仲代達矢、その母を演じた樹木希林の演技は、セリフは少ないものの、思いがあふれていて圧巻だった。
また、支援者の川村さんを演じたのは天野鎮雄。アマチンは、私が中学生の頃は、東海ラジオの深夜番組の人気DJだった。彼の演技も川村さんの実直な人柄をよく出していた。
 
自白以外の物証は何ひとつなし。
1964年一審の津地裁は無罪を言い渡したが、続く名古屋高裁で逆転の死刑判決、1972年最高裁で死刑判決が確定した。
第7次再審請求では弁護側が重要な新証拠を提出したにもかかわらず、2006年12月名古屋高裁は、「自ら極刑となることが予想される重大犯罪について進んでうその自白をするとは考えられない」と述べて、自白の信用性を認めた。
 
事件当時35歳だった奥西さんは、現在、86歳。高齢で体調もすぐれないという。
タイトル「約束」の意味・・・・
奥西さんと支援者川村さんとが、「(無罪を勝ち取るまで)しぶとく、しぶとく生きましょう」という固い約束。その川村さんも今はいない。
 
司法が生身の人間の人生を奪ったことに大きな怒りを感じる。
でも司法にすがるしか方法がない奥西さん。
最高裁は1日も早く奥西さんを助けてあげてほしい。
 
 
 
 
 
 

遠方からの法律相談

 
 
(女性弁護士の法律コラム NO.137)
 
先週、京都府外の、しかも、とても遠方から来られた方の離婚の法律相談を受けました。
電話で申し込みがあった時、「今週中で」という指定があり、電話があったその翌日しか時間が取れそうになかったので「明日夕方であれば」と返事をすると、本当に翌日飛んで来られ、恐縮してしまいました。
結局、地元の弁護士を依頼した方が良い案件と思われましたので、知り合いはいない県でしたが、地元弁護士の情報を提供させていただきました。
 
全国に支店があるような会社の顧問をしている法律事務所であれば、弁護士が全国各地を飛び回ることもあるでしょうが、一般には、近畿県以外の遠方の裁判所に赴くことは、あまり多くありません。
私が30年余り弁護士をしている中で、最南は沖縄(日帰りしました)でしたが、最北は埼玉までしか行ったことがありません。
 
でも最近は、遠方の裁判所の訴訟でも、準備書面で主張を述べる手続きの間は、電話会議による裁判の方法もあり、裁判所まで出向かなくてもよいので、受任しやすくなりました。
ただし、このようなケースは、少なくとも当事者の方がいつでも事務所に打ち合わせに来れることが前提となります。
 

夫婦別姓、国賠訴え棄却(東京地裁)

 
 
(女性弁護士の法律コラム NO.136)
 
夫婦別姓を認めない民法の規定を国会が改正しないのは憲法違反だとして、計600万円の国家賠償を求めた初めての訴訟の判決で、5月29日、東京地裁は、「別姓を名乗る権利は、憲法上、保障されていない」という合憲判断を下し、原告の請求を棄却しました。
 
夫婦別姓については、ブログの中でも何度も書き、この裁判のことも紹介しました(右の検索欄で「夫婦別姓」と入力してご覧ください)。
 
国は、1996(平成8)年、法制審議会が改正要綱案まで策定したにもかかわらず、法案として国会には提出していません。
夫婦同氏を強制するのは世界でも日本くらいだと言われています。
国連の女性差別撤廃委員会は、2003年8月と2009年8月の2度にわたり、是正するよう勧告を出しています。
 
判決は「姓名は人格の象徴で、人格権の一部と言えるが、夫婦が共に結婚前の姓を名乗る権利まで憲法で保障されているとはいえない」と判断。
他方「結婚後の改姓で人間関係やキャリアに断絶が生じ、不利益が生じる恐れがあるため、選択的夫婦別姓制度を求める声は多い」とも判示しています。
 
かつて、NHKが在日韓国人の名前を日本語読みしたことについて争われた裁判で、昭和63年2月16日、最高裁は「氏名は、社会的にみれば、個人を他人から識別し特定する機能を有するものであるが、同時に、その個人からみれば、人が個人として尊重される基礎であり、その個人の人格の象徴であって、人格権の一内容を構成するものというべきである」との判断を下しました。
「氏名」というのは、人間にとってとても重要な権利なのです。
民法における非嫡出子の相続分差別については、近く最高裁が違憲判断を下すと言われています。国は、イヤでも相続分差別については改正を迫られるでしょう。
合憲判断にあぐらをかかず、是非、夫婦別姓の導入も真剣に検討してほしいと思います。
 
 
 
 

養育費の支払い2割に低迷

 
(女性弁護士の法律コラム NO.135)
 
離婚による母子家庭が増える中、父親から養育費を受けているのは約20%と低迷している(2013年4月23日付け京都新聞)。
 
厚生労働省の調査によると、母子世帯は、1983年に約71万世帯だったのが、2011年には約123万世帯まで増加した。平均年収はわずか291万円。
一方、離婚母子家庭で養育費を受けている割合は1983年の11.3%から1998年は20.8%まで増えたが、その後は横ばいで2011年は19.7%だった。
 
これまで、何件も離婚事件に関わり、未成年の子どもがいる場合で生活保護を受給していなければ、たいていのケースで養育費の取り決めも合意の中に盛り込んできた。
 
しかし、離婚後、「養育費が支払われていません」という相談は案外少ない。
相談が少ないからと言って、どのケースも合意どおり払われているとは、思っていない。
別れた元夫とはもう関わりたくないとか、父親がサラリーマンではないため強制執行したくても差し押さえるものがないとあきらめているケースもたくさんあるだろう。
 
仮に差し押さえる財産がなくても、養育費を家裁の調停などで取り決めた場合には、家裁が履行勧告や履行命令を出してくれるので、最低、そのような手続きは取ってみてはどうかと考える。
 
 
 
 
 
 

89歳の女性の所へ(遺言の法律相談)

 
(女性弁護士の法律コラム NO.134)
 
元依頼者Hさんの紹介で「89歳の叔母が遺言の相談をしたいと言っています。タクシーでなら事務所へ行けると思いますが、できれば自宅まで来てほしいのですが」との依頼があり、昨日、その89歳の女性Kさん宅へ行ってきました。
Kさんは今も一人暮らしで、時々、姪が様子を見に行かれているとのことでした。
 
89歳の女性ってどんな方だろう?、遺言を書く場合の能力とかは大丈夫だろうか?など少し心配しながら、前もって親族の方からKさんの情報を伺って訪問しました。
でも、実際にお目にかかると、「89歳?」と思うほど元気でしっかりされており、親族の方から伺っていた昔の話題などスラスラと話されました。
 
「89歳って、何年生まれですか?」と尋ねると、「大正13年」との答えが返って来て、そうか、私の亡くなった父親と同じ年なんだと、なにか感慨深いものがありました。
 
話の内容からは遺言を書かれた方が良いと思われましたが、誰にどうしたいのか迷っておられるようなので、「遺言を作ろうと思われた時にはまた来ますから」と言って帰りました。
 
 

銀行の遺産整理業務の「ぼったくり」

 
(女性弁護士の法律コラム NO.133)
 
最近の銀行というのは、昔なら無料だったものが、どんどん手数料がかかるようになっている。
例えば、時間外のATMによる出金、枚数の多い両替などなど・・・・
 
でも、こんな「ぼったくり」があるとは知らなかった。
銀行は、預金業務や貸付業務以外に「遺産整理業務」というのも行っている。
内容は、相続財産の調査や相続財産目録の作成、遺産分割協議書の作成そして相続財産の運用計画の助言など。
最終的には、最後の「相続財産の運用計画」が目的なんだろうと思う。
 
その遺産整理業務に関し、次のような相談を受けた。
 
夫を亡くした80代のAさんは、ある大手銀行にこの遺産整理業務を依頼した。
その後、相続税申告手続きを税理士に依頼し、税理士が相続財産目録を作成することになったので、税理士がAさんを伴い銀行を訪れた際、口頭で「相続財産目録の作成はうちの方でするから結構です」と断った。
ところが、しばらくして、銀行は、相続財産目録を作成し、高齢のAさんに交付してしまった。
Aさんの税理士は、「口頭で断ったではないか」と抗議したものの、銀行側は「そのような記録はない」「Aさんは、何も言わずに目録を受け取った」と強気の姿勢。
 
「ぼったくり」と思ったのは、その手数料の金額である。
 
委任契約書によると、中途解約の場合、相続財産目録を交付する前なら「定額30万円」、相続財産目録交付後であれば、「相続財産に一定の料率を架けて算出された合計金額の50%+30万円」となっており、結局、Aさんは、相続財産目録を受け取ってしまったばかりに数百万円の解約手数料の請求書が届いた。
つまり契約後、目録交付前であれば、仮に財産調査に着手していなくても、銀行は30万円の手数料を請求することができる。
また、目録さえ交付してしまえば、(相続財産の額にもよるが)その手数料はグンとはねあがる。
しかし、相続財産目録というものは、弁護士でなくても、たいていの法律事務所の多少の経験ある事務局であれば、作成できるものである。
実際Aさんが交付を受けた目録も、うちの事務所の事務局なら作成できるような内容であった。
 
消費者契約法は、たとえ契約してしまっても、その条項が消費者の利益を不当に害する場合には、その条項を無効にすることができる。
私としては、このような「ぼったくり」は消費者契約法により十分争える気がした。
しかし、最終的にAさんは、銀行との紛争は望まないとして手数料を払われたようである。
 
それにしても、このような大企業の「ぼったくり」は許せない。
銀行に「遺産整理業務」を委任する場合には、十分慎重に検討してほしい。
 
 
 

「暴力」を容認してきた日本社会

 
(女性弁護士の法律コラム NO.132)
 
大阪の高校のバスケット部で起きた体罰による生徒の自殺や柔道女子の五輪代表選手らによる指導者に対するパワハラの告発をきっかけに、学校やスポーツ界における「体罰」や「暴力」などが社会問題となっている。
 
でも、これは、学校やスポーツ界だけの問題なのだろうか。
 
私たち弁護士が日常的に扱う「暴力」問題には、夫婦間の家庭内暴力(DV)、親の子どもに対する虐待、セクシュアルハラスメントあるいはパワーハラスメントなどがある。
 
例えばDV法が施行されたのは2001年だが、これらの問題は決してその頃から始まったものではなく、古くから日本社会で起こってきたのが、表面化・社会問題化したものにすぎない。
家庭内で言えば、夫が妻に暴力をふるうのは「仕方がない」、父親や母親が子どもに暴力をふるうのは「しつけ」だとして、ずっと容認されてきた。
法ができた現在でさえ、「多少の暴力ならいいじゃないか」という風潮が法の世界でもあるのが許し難い。
以前扱ったDVによる離婚事件で、婚姻中、夫は妻や子に暴力をふるっていたが、実は、その夫は自分の親から幼い頃から暴力をふるわれていた。
まさに暴力の連鎖である。
 
学校での体罰やスポーツ界での暴力も根は同じ。
 
ところで、第1次安倍内閣の時の2007年2月、文部科学省は体罰の一部を事実上容認する通知を出した。
それから6年、安倍首相は、体罰は「断ち切らなければならない悪弊だ」「日本の伝統という考え方は間違い」と言いつつ、他方で「クラスの一体性あるいは授業を進める上に於いて、著しく進行を乱す児童がいたときの指導については様々な考えがあると思うんですよ」とし、やはり6年前と意識は変わっていないじゃないかと思うばかり。
 
体罰や暴力は、人としての尊厳を否定するものという意識を、もっともっとこの社会に根付かせていかなければいけない。
 
 
 
 
 

夫婦別姓 反対派が上回る??

 
(女性弁護士の法律コラムNO.131)
 
2013年2月17日京都新聞朝刊の見出しは「夫婦別姓 反対派が上回る」。
 
1996年、法政審議会が夫婦別姓制度を導入した民法改正要綱案をまとめてからもう17年になろうとしている。
2011年には、法改正を待てないと女性が提訴している。
なのに「反対派が上回る」ってホント?って思った。
 
内閣府が発表した「家族の法政に関する世論調査」によると、選択的夫婦別姓制度導入のための民法改正の可否について、「必要ない」とする反対派が2006年の前回調査と比べ、1.4ポイント増の36.4%で、「改めても構わない」の賛成派35.5%をわずかに上回った。
だから新聞の見出しは「反対派が上回る」
 
でも、よく読んでみると、60代以上は反対派が多数を占めたが、男女ともに50代までは賛成派が多数を占めている。
特に結婚でこの問題に直面する20代、30代の女性はそれぞれ53.3%、48.1%が賛成、若い世代では、反対派との差が広がっている。
 
また、家族の一体感に関する質問では、「名字が違っても家族の一体感には影響がない」との回答は59.8%で前回比3.8ポイント増。逆に「名字が違うと家族の一体感が弱まる」は36.1%で3.7ポイント減。
多様な家族のあり方を認める意識は着実に広がっていることがわかる。
 
夫婦が同姓にするか別姓にするかは、個人の自由であり、また「同姓」という形だけで家族の一体感が守られると考えている自民党議員の発想はとうてい理解できない。
 
民法改正を1日も早く実現したいが、今の政権ではまだまだ先かなあ・・・・

司法修習生の貸与制の保証人がオリコ!?

 
(女性弁護士の法律コラム NO.130)
 
司法試験に合格した司法修習生には、これまで給与が支給されていましたが、昨年11月から給費制が廃止され、国がお金を貸す「貸与制」となりました。
 
貸与制は、修習期間中の生活費を国(最高裁判所)から無利子で借りる制度ですが、申し込みには連帯保証人が2人必要です。
連帯保証人が立てられない修習生はどうしたらよいのでしょうか?
そのような修習生は、最高裁が選定したカードローン大手企業のオリエントコーポレーション(オリコ)に保証料を払って保証してもらうことになっています。
しかも、オリコが保証を拒否すると、修習生は貸与さえ受けられなくなります。
 
保証料は貸与額の2.1%。毎月23万円借りる修習生の場合、毎月4830円がオリコへの保証料です。
保証料は、あらかじめ給料天引きされ、1年間でオリコには約6万円が入ります。
昨年11月からの新66期修習生の利用者は297人とのことですから、オリコは毎年約1800万円の保証料を得ることになります。
貸与制で借りた金の返済は、5年の返済猶予後、10年間で返済します。返済を怠ると、オリコが代位弁済しますが、その際、オリコは年6%の遅延損害金を請求することができます。
 
でも、なぜオリコなんでしょうか?
オリコは、過払金返歌訴訟や消費者被害事件などでよく相手となる会社です。
弁護士になって自分の保証人となってもらっているオリコ相手に裁判ができるのでしょうか?
検察官や裁判官はどうでしょうか?
 
本当におかしな話です。
国会や最高裁は、一体、何を考えているのだろうかと思います。
給費制・貸与制の問題は、法曹養成制度全体の中で議論されるべき問題です。

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