1. 女性弁護士の法律コラム

女性弁護士の法律コラム

 
(女性弁護士の法律コラム NO.169)
 
集団的自衛権行使容認の論拠として、1959(昭和34)年の砂川事件最高裁判決を援用している政府、自民党。
 
砂川事件というのは、1957(昭和32)年7月、東京都砂川町(現、立川市)の米軍基地に立ち入った、基地拡張に反対するデモ参加者7人が刑事特別法違反罪で起訴された事件です。
この砂川事件は、1959年3月、第一審の東京地裁が日米安保条約に基づく駐留米軍は憲法9条が禁じた「戦力」にあたるとして無罪を言い渡しました(いわゆる伊達判決)。
しかし、その後同年12月、最高裁は、安保条約や駐留米軍を「司法審査の範囲外」として、一審判決を破棄差し戻し、後に有罪が確定しました。
 
私たちは、この砂川判決について、大学生の時、憲法の講義で学び、また、法律家を志した後は司法試験の受験勉強でも勉強しました。
 
内閣総理大臣らの「解釈」によって憲法9条に集団的自衛権を認めるのは立憲主義に反するという国民の批判に対し、最近になって、政府・自民党は、砂川事件最高裁判決が「わが国が存立を全うするために必要な自衛措置を取り得ることは国家固有の権能の行使として当然」としており、集団的自衛権を否定していないと主張するようになりました。
 
それに対し、当時の砂川事件を担当した弁護士や一審の無罪判決に関わった元裁判官が批判の声を上げています(2014年5月10日京都新聞朝刊)。
 
5月9日、弁護士らは、東京都内で記者会見し、裁判の主要な争点は日米安保条約に基づく米軍駐留の憲法9条適否であって、わが国固有の自衛権の問題ではなかったことなど、最高裁判決のとらえ方を説明し、集団的自衛権行使の可否について判断も示唆もしていないと指摘しました。
 
また、一審を担当した元裁判官の松本一郎独協大名誉教授は、「自衛隊は1954年に発足したばかりで、よちよち歩き。米軍を守るといった集団的自衛権は議論にもならなかったし、自衛権と言えば、個別的自衛権だった」と当時を振り返っています。
 
立憲主義を踏みにじる政府・自民党のやり方は絶対認めることはできません。
私たち弁護士も、大きな反対の声を上げていきたいと思います。

 
(女性弁護士の法律コラム NO.168)
 
新聞報道によると、2013年4月1日に施行された改正労働契約法20条を根拠に、非正規労働者が正規労働者との格差是正を求めた裁判が、あいついで2件東京地裁に提訴されました。
 
労働契約法20条は、有期雇用契約の労働者について、期間の定めのあることによる不合理な労働条件を禁止しています。
この規定は、民主党政権下での数少ない成果(?)の1つと言えるでしょう。
 
●東京メトロコマース訴訟
東京メトロコマースは、駅構内の販売店等を経営する会社で、正規・非正規合わせて約840人の従業員がいます。
今回、駅販売店で販売を担当する4名の有期雇用社員が労働条件の格差は違法として損害賠償請求訴訟を提訴しました。
販売店では、正社員と同じ時間、同じ仕事内容で働いているにもかかわらず、基本給・手当・賞与・退職金いずれも大きな労働条件の差があるとのことです。
 
●日本郵便訴訟
日本郵便株式会社は、誰もが知っている「郵便局」です。
従業員は全体で約39万人、正社員以外の有期雇用社員は約19万人で49%を占めてします。
原告3名は、時給制契約社員で、正社員と同じ勤務シフト制に組み込まれ労働時間も同じです。
しかし、例えば、年末年始の繁忙期に正社員にはつく手当が有期社員には支払われなかったり、夏季冬季休暇や病気休暇などが取得できないなどの格差があるとのことです。
そこで、病気休暇を取得する地位、諸手当の支払いを求めて提訴しました。
 
このような正規と非正規とで大きな格差のあるような労働条件の職場は、今の社会にたくさんあると思います。
でも、立場の弱い非正規労働者は、声を上げると雇止めとなったりするので、じっと我慢を強いられています。
今回の2件の裁判は、非正規労働者とそれを支援する労働組合が立ち上がって提訴に至りました。
 
是非、頑張ってほしいと思います。
 
 
 
 

メールが夫婦の愛情を裏付ける!?

 
(女性弁護士の法律コラム NO.167)
 
現在、過労自殺(労災認定されている)により死亡された労働者の遺族の代理人として、会社に損害賠償を求めて提訴した事件を担当している。
 
会社側は、長時間労働が自殺の原因であることを認めず、「夫婦の不和」が原因だと主張している。
証拠として、亡くなられた本人のメールを多数提出しているが、会社側の代理人弁護士は、準備書面の中で、夫婦のメールの内容が「今から帰る」「仕事」などといった素っ気ないものが多いので、愛し合っている夫婦なら、もっと愛情を裏付けるメールがあるはずだと反論している。
 
会社側の代理人弁護士が本当にそう思っているのか、あるいは、会社側の立場に立って心にもないことを書いたのかは定かではないが、私が会社側代理人だったら、このような準備書面は書けないなあ。
夫婦の「愛の表現」など多種多様である。
およそメール上の言葉だけで判断できるはずがない。
メールではないが、昔よく言われた、家では「メシ」「風呂」「寝る」しか言わないおとーちゃんにもきっと夫婦の愛情はあるだろう。
私自身、メールでゴチャゴチャ書くのがあまり好きではなく、誰に対しても、用件のみの素っ気ないメールを書くことが多い。
 
長時間労働で自殺にまで追いやられた挙げ句、メールの表現から「夫婦に愛情がなかった」とまで言われたら、遺族の無念な思いや怒りはより一層増すばかりである。
 
 
 
 

残業代ゼロより残業ゼロに!

 
(女性弁護士の法律コラム NO.166)
 
昨日は、所属している法律家団体の例会があった。
「労働政策の動向と労働者保護の法的課題」と題して、弁護士でもある吉田美喜夫立命館大学教授にご講演いただいた。
 
4月22日、経済財政諮問会議・産業競争力会議合同会議(議長・安倍晋三首相)が労働時間規制の撤廃する制度導入の検討を求める文書を提出するなどの動きもあり、タイムリーな企画だった。
 
労働基準法で、労働時間は「1日8時間、週40時間」と定められ、それ以上働いたら残業代を払わなくてもならないにもかかわらず、どんなに長く働いても残業代はゼロにする企てが進んでいる。
第1次安倍内閣の時、財界から「ホワイトカラーエグゼンプション」が提言され、法案化までされたが、国民世論の激しい批判を受け、国会で審議すらできなかった。
それが、またしても、第2次安倍内閣で浮上してきた。
今回は、対象として、年収1000万円以上の高収入社員のほか、高収入でなくても、労働組合との合意で認められた社員を検討するという。
 
吉田先生は、使用者が労働者から労働力を買うのが労働契約で、その労働力は何ではかるかというと「指揮命令が及ぶ労働時間」である、従って、何時間働いても残業代を払わないことは、もはや「労働力」を買うのではなく、「人間そのもの」を買う=奴隷労働と同じだと語られた。
 
また、解雇に関する規制もどんどん緩められていこうとしているが、解雇が自由にできれば、労働者は結局、有給休暇や育児休業などの様々な権利を行使したくても、解雇を怖れ、結局、権利行使もできなくなる。
 
派遣法もどんどん改悪されていっている。
 
こんな労働者の使い捨ては絶対許してはならない。
 
 
 
 
 
 
 

 
(女性弁護士の法律コラム NO.165)
 
2010年7月31日付けの当ブログで、自衛隊内のセクハラ及び退職強要で原告女性が勝訴したことを書きましたが、今度は、自衛隊内の「いじめ」による自殺です。
 
2004年、先輩の暴行や恐喝などの「いじめ」を苦に自殺した海上自衛隊護衛艦「たちかぜ」乗組員の1等海士(当時21歳)の遺族が国などに約1億5000万円の損害賠償を求めた訴訟で、東京高裁は、2014年4月23日、いじめと自殺との因果関係を認め、1審の東京地裁が認定した440万円を大幅に増額する約7300万円の損害賠償を認めました。
 
1審は、「自殺は予測できなかった」として先輩による暴行と恐喝について賠償責任を認めただけでした。
 
いじめと自殺の因果関係を認める決め手となった文書は、3等海佐による「乗組員アンケートが存在する」という内部告発から明らかになりました。
文書隠し発覚後、海上幕僚監部の訟務専門官がこのアンケートを破棄するよう現場に指示していたことも判明。
結局、廃棄には至らず、2012年9月、国側から高裁に提出されました。
 
大津市のいじめ自殺事件でも、生徒のアンケートについて、当初、教育委員会は一部を隠蔽するということがありました。
また、私が過去に関わった京都市立小学校の教務主任の教師の過労死事件では、なぜか、死亡年度だけの職員会議の議事録が「なくなって」いました。
「不都合な事実」隠しは、企業だけでなく、国や自治体などどこにでもあるということを痛感します。
 
内部告発した3等海佐は、2013年12月11日、「信念で告発した」と証言したそうです。
ところが、報道によると、この3等海佐は、現在、規律違反の疑いで懲戒処分の手続きが進められているとのことです。
国が今すべきことは、内部告発者の責任追及ではなく、「隠蔽」体質の改善や自衛隊内部のハラスメント対策ではないでしょうか。
 
 
 
 
 
 

金融機関の不当な扱いに屈しない

 
(女性弁護士の法律コラム NO.164)
 
ある人が亡くなり、遺言は、相続人の一人である私の依頼者には一切遺贈なしという内容でした。
そのため、他の相続人に対し遺留分減殺請求(民法1031条)を行ったのは言うまでもありません。
 
次に、心当たりの金融機関に、亡くなった人の口座があったかどうか調べ、口座が存在した金融機関から死亡時の残高証明を取りました。
ただ、一般論で言うと、他の相続人が生前に出金している場合もあったりするので、入出金の状況がわかる取引履歴を入手したいと考え、3月6日、その金融機関に申請の文書を送りました。
 
ところがです。
 
3月14日、その金融機関の担当者が「共同相続人全員の同意がないと出せません」「あるいは弁護士会照会という手続きを取ってください」と電話をかけてきました。
「最高裁の判例で、相続人が単独でもできるとなっているじゃないですか」と言っても、「本店の法務部の指示なので」という返事。
京都でも有数の金融機関なのに、なんで最高裁判決に従わないの!!と私は内心怒りまくりました。
 
すぐに支店長と担当者宛てに、最高裁判例が存在すること、もしあくまでそれに反する取り扱いをするなら損害賠償訴訟を起こすと書いてFAXしました。
 
次に、担当者から来た返事は「決して協力しないわけではない」「『お願い』です」というものでした。
それで、再度「『お願い』には応じられない」ことと最高裁判例も添付してFAXを入れました。3月18日のことです。
すると3月20日、開示すべき理由を明らかにすれば応じるとの回答が返ってきました。
 
そして、本日、やっと取引履歴が私の手元に届きました。
 
最高裁判決が存在しても、それに従わない金融機関があることに驚きました。
弁護士会照会で手続きするのは、簡単ですが、費用も時間もかかります。
また、せっかく、どこかの弁護士が最高裁まで争って最高裁判決を勝ち取ってくれたのに、私たちが安易に最高裁判決に反する金融機関の扱いに応じるのは、法律家としてあるべき姿ではないと思いました。
 
本当に、カリカリ頭に来た約20日間でした。
 
 

生活保護を受けて良かった・・・

 
(女性弁護士の法律コラム NO.163)
 
昨日の日曜、ランニングしがてら、元依頼者の方の自宅に初めて寄ってみた。
 
事件の依頼を受けていた時、一人暮らしで身体も弱く、しかもわずかな年金以外には定まった収入がないことを知ったので、私はしきりに生活保護の受給を勧めた。
しかし、「絶対に生活保護は受けたくない」、「受けるくらいなら車の中で寝泊まりしてもいい」などと言って強く拒んでいた。
 
生保は受けたくないという気持ちは固かったが、病弱で、年齢も60代後半になっていたので、どうしても放っておけなかった。
そこで生活相談をしておられる元市会議員の方の所へ同行し、生活保護とはどういうものなのかなどを説明してもらい、住まいも探してもらうよう頼んだ。
 
その後、生活保護を受けることにしたと連絡があり、ホッとした。
 
昨日、半年以上ぶりに会ったが、しみじみと「生活保護を受けて良かった」と言ってくれた。
また、生保を受けていることで嫌な思いもすることもあると率直に語ってくれた。
生保の悪用事例が新聞に載ったりするが、その元依頼者の方のように「税金で生活させてもらってるんだから」と何度も語る真面目な人もいることを知ってほしいと思う。
 
つつましく生活されているようで、自宅もとても整理整頓され、私の部屋などと比べると、ずっと綺麗に使っておられた。
 
これからも、時々、立ち寄りたいと思う。
 
 
 
 
 
 

 
(女性弁護士の法律コラム NO.162)
 
NHKの籾井会長が、NHKの理事10人全員から辞表を取り付けていたことが発覚し、世間を驚かせた。
籾井会長は、国会で「一般社会ではよくあること」と答弁したが、こんなこと、一般社会でよくあるはずがない。
 
「一般社会でよくあること」ではないが、しかし、全くないわけではない。
ずいぶん前に関わった、ある事件のことを思い出した。
 
京都のある企業で働いていた労働者。
不当解雇ということで解雇無効の裁判を起こすと、会社側から、その労働者の自筆の退職届が提出され、会社の言い分は「解雇じゃない、自分で退職したんだ」とのこと。
実は、その企業は、労働者を雇用する時、全員から日付欄を空白とした退職届を取っていたことが判明した。
 
経営者が労働者を解雇するには「正当な理由」が必要だ。
だから、解雇しても、正当な理由があるか否か、争いとなる可能性がある。
それを避けるために、経営者は、あらかじめ日付欄空白の退職届を取っておき、労働者を解雇したいと思った時、その日付欄を勝手に記入し、労働者が自分の意志で退職した扱いにできるようにしていたのだ。
 
もちろん、そんな退職届は無効に決まっている。
出すこと自体、拒否すれば良いが、雇用される時、労働者がそんなこと言う力関係にない。
出してしまうと、その会社では労働者からあらかじめ退職届を出させているという慣行があるなどと同僚が証言してくれないと、証明は難しくなる。
 
籾井会長の言う「一般社会」ってどんな所だろう。
どこにしても、そんな所はブラックだよね。
 
 

マタニティ・ハラスメント110番

 
(女性弁護士の法律コラム NO.161)
 
昨日は、午前10時から午後5時まで、京都弁護士会の両性の平等に関する委員会主催の「マタニティ・ハラスメント110番」がありました。
 
私も委員として、午前10時から正午まで担当しました。
 
数日前には京都新聞や毎日新聞にかなり大きな記事が載せてもらえたのですが、午前10時になっても1件の電話もかかりません。
 
関西テレビ(8チャンネル)からテレビ取材が来られており、お昼前のニュースで報道してもらえるとのことで、インタビューを受けました。
 
ニュースそのものを観ることはできませんでしたが、午前11時45分以降、3台の電話が一斉に鳴り、テレビニュースを観た方々からの相談がありました。
 
結局、合計8件の相談がありました。
 
「現在、育児休暇中だが、復職したら正社員からパートに変わってくれと言われている」
「うちの職場は妊娠したら退職するものと、先輩から言われた」
「産休に入る前に、産休明けに退職してもらうことになったと言われた」
など、典型的な労基法違反、均等法違反の相談が寄せられ、まさにマタニティ・ハラスメントそのものでした。
また、妊娠・出産・育児休業の権利について知らない労働者がたくさんいることも実感しました。
 
広報が十分でなく、相談件数は多くありませんでしたが、これからも、このような取り組みを行っていきたいと思います。
 
 
 
 
 
 
 

宇治平等院鳳凰堂の「鳳凰」は、実はレプリカ

 
(女性弁護士の法律コラム NO.160)
 
一昨年11月から改修工事が進められている宇治平等院の鳳凰堂。
4月3日から内部拝観が再開されるとのこと。
 
この鳳凰堂中堂の屋根南北両端に据えられている「鳳凰」像。
1万円札の裏にもそれが図柄となっている。
この「鳳凰」像が修復により、約900年前の金色の輝きを取り戻し、報道関係者に公開されたという(2014年2月25日付け京都新聞朝刊)。
 
平等院鳳凰堂の屋根の上の「鳳凰」像が、実はレプリカだったということは、ある裁判を担当する中で初めて知った(本物は、平等院ミュージアムに保管されている)。
ある裁判というのは、以前にもブログに書いたことがある(2013年2月25日付けブログ)宇治ユニチカ工場のCS2裁判だ。
この裁判は、宇治ユニチカ工場で働いていた労働者が工場内のCS2により、重篤な健康障害を起こし、労災認定を受け、その後、ユニチカ相手に損害賠償請求訴訟を起こしたというもの。
ユニチカの排ガスは、工場内の労働者はもとより、宇治の街中にも排出され、1968年「鳳凰」像はレプリカに変えられたということを知った。
 
レプリカは再生できても、失ったいのちや健康は二度と戻らない。
 
平等院の「鳳凰」像は、私にとって宇治ユニチカCS2裁判の象徴であり、必ず原告労働者の皆さんの姿を思い出させる物である。
 
 
 

 
(女性弁護士の法律コラム NO.159)
 
日本が攻撃を受けなくても、同盟国などが攻撃を受ければ反撃できるとする集団的自衛権。
その行使容認に向けて、安倍首相は、2月12日の衆議院予算委員会で、次の発言をしました。
 
「(政府の)最高の責任者は私だ。政府の答弁に私が責任をもって、そのうえで選挙で審判を受ける」
 
なにか、自分が君主にでもなったかのような発言です。
 
そもそも憲法は、個人の権利や自由を保障するため、首相はもとより国家権力を制限し拘束するものです(憲法前文、99条)。それが立憲主義の考え方です。
たとえ選挙で多数を取った政権でも、その都度、憲法の解釈を自由に変えることはできないのです。
どうしても変えたければ、憲法96条に定められた正当な改正手続きをふむしかないのです。
 
このような暴走発言に対し、日本国内よりは、海外の方が鋭く反応しています。
最近のNHK会長や経営委員の問題発言についても、日本国内より海外の方が敏感なのがとても気になります。
国民の多くは、なぜ怒らないのでしょうか?
メディアももっと取り上げるべきです。
「戦争前夜」というのは、このような状態なのか、と不安になります。
 
他方、全国の弁護士有志でつくる「明日の自由をっまもる若手弁護士の会」は、2月14日のバレンタインデーに合わせ、安倍首相に、憲法学の権威である芦部信喜東大名誉教授の著書「憲法」とチョコレートを贈ったそうです。
さすが若者!なかなかウイットに富んでますね!
 
 
 
 
 

弁護士の選び方

 
(女性弁護士の法律コラム NO.158)
 
昨年、「離婚・再婚の損得」という特集に惹かれて買った「週刊ダイヤモンド」(2013年9月28日号)に、「後悔しない離婚弁護士選びの目安」という記事も掲載されていた。
 
「事務所の大きさや知名度が、業界内の評判と必ずしも一致しない」「検索サイトの検索結果も同様」などという文章とともに、「後悔しない離婚弁護士選びの目安」という項には、「事務所の宣伝が派手過ぎない」「若過ぎたり、逆に高齢過ぎたりしない」、「居丈高が話し方をしない」、「性格面での相性が合う」などがあげられていた。
 
「事務所の宣伝が派手」というのは、テレビやラジオを使って大々的に宣伝をしている債務整理や過払いなどを中心に扱っている大手法律事務所などのこと?
「若過ぎたり、高齢過ぎたり」って一体、何歳のこと?
 
自分が弁護士として「選んでもらう」立場なのでコメントしにくいが、私としては、「離婚」に限らず、どんな事件でも、「性格面での相性が合う」という点が比較的大切かなと思う。
相談者も弁護士も「人間」である以上、「相性」があり、法律相談を通して、お互い信頼関係が持てるかどうかがポイントになると思う。
実際に、弁護士の法律相談を受けてみて、依頼することに不安を感じるようなことがあれば、何人か他の弁護士の相談を受けてみた上で、依頼する弁護士を決めれば良いだろう。
 
 
 
 
 
 

エンディングノートの落とし穴

 
(女性弁護士の法律コラム NO.157)
 
書店へ行くと、たくさんの種類のエンディングノートが販売されている。
エンディングノートというのは、自分の人生が終わる時に備えて、死後の希望などを書き留めておくノートである。
自分の年齢と職業柄、多少は興味もあるので、手に取ってパラパラと中身を見ることもある。
 
家族関係、不動産・預貯金・保険などの財産の詳細、葬儀・埋葬方法、親族や友人の連絡先、延命治療に対する希望など、多岐にわたる項目が印刷してあるので、それに従って、自分の希望を書き込んでいけばよく、しかも1冊にまとまるので便利だと思う。
 
ただ、注意しなければならないのは、「エンディングノート=遺言」ではないということである。
 
自筆証書遺言は、すべてを自分の字で書き、日付を入れ、署名押印しなければならない。
ノートの中には、「遺言」として効力が生じるよう書き方が指示されているページのあるものもあるが、ノートの印刷された項目に沿って記入していくだけでは、あくまで「備忘録」「希望」という意味しかない。
 
もし、エンディングノートを「遺言書」としたいならば、是非、弁護士に相談してほしい。
 

あの「派遣村」は何だったのか・・・

 
(女性弁護士の法律コラム NO.156)
 
支持率が低下しないことをいいことに、安倍首相がアベノミクスの「成果」や「積極的平和主義」、沖縄の基地問題など、とうとうと持論を展開する報道が不愉快きわまりない。
 
その上、安倍首相の息がかかった、NHK籾井会長の従軍慰安婦発言、NHK経営委員である長谷川三千子氏の女性蔑視発言など、そのとりまき連中の人権無視の発言にも腹が立つ。
 
この今の時代が、今後将来起こるかもしれない「戦争」の前=「戦前」の姿かも?と思うと、こんなこと絶対に許しちゃいけないと思う。
 
そしてまた、安倍路線を受けて発表されたのが、昨日(1月29日)の労働政策審議会の部会の報告書。
労働者派遣法の改正について議論してきた労政審は、現在3年となっている派遣受け入れ期間の上限を廃止し、3年ごとに働く人を入れ替えさえすれば、企業は同じ職場で派遣を無期限に継続できるとした報告書をまとめた。
2015年4月の実施をめざすという。
 
2008年秋のリーマンショックを機に起こった大量の「派遣切り」や「雇い止め」。
「派遣村」が社会問題化した。
そして、民主党政権の下で、不十分ながら、日雇派遣の規制や違法派遣の「みなし雇用」の改正が実現したのが2012年3月。
 
派遣労働は、働く企業に直接雇用されるものではないため、あくまで一時的な仕事に限られるというのが法の大原則だったものを、この報告書は、企業は人さえ代えれば永久に派遣労働者を使うことができるというように転換するもので、これでは、今後ますます不安定な労働者が増加していくことは目に見えている。
そして、一人ひとりの派遣労働者は、3年たてばポイ捨て。
働いている間は、「雇い止め」を怖れ、自分の権利も主張できない。
 
こんな改悪は、絶対に認められない。
 

 
(女性弁護士の法律コラム NO.155)
 
以前(2011年8月12日)にも、このコラムで書いたことがありますが、民法733条が女性だけに離婚後6ヶ月経過しないと再婚できないと定めていることは、法の下の平等に反し、すごく不合理な規定だと思っています。
 
そんな折り、大学時代からの友人である岩城穣弁護士(大阪弁護士会所属)が、民法733条の再婚禁止期間を適用させなかったという画期的な成果を得たと事務所ニュースで読んだので、紹介します。
 
A子さん(1945年生)は、1969年にBと結婚したが、1989年から別居。その後Bとは音信不通状態。
他方、A子さんは1993年頃からCと同棲を開始し、事実上の夫婦として暮らしてきた。
A子さんとBは2011年11月に離婚が成立したが、内縁の夫Cが末期ガンであることが判明。すぐにでもCとの婚姻届を出したいが、民法の規定に従って離婚後6ヶ月も待っていたら、Cは死んでしまうかもしれない。
A子さんは、既に60代で民法733条が危惧するような妊娠の可能性はない。
 
そこで、A子さんは、弁護士と相談し、Bとの離婚届とCとの婚姻届の両方を役所を提出することにしました。
すると、戸籍係から電話があり、岩城弁護士はこれまでの経緯を説明し、受理しなければ国家賠償請求訴訟も辞さないと強く申し入れました。
またA子さん自身も役所に一生懸命説明したところ、なんと婚姻届は受理されたそうです。
Cはその2ヶ月後に死亡されたそうです。
 
民法733条は、離婚後6ヶ月以内の再婚を認めると、前婚か後婚かどちらの夫の子どもかわからなくなるのでそれを防ぐというのが立法趣旨です。
しかし、再婚が認められなくても、妊娠してしまう女性もいるでしょうし、現在はDNA鑑定によりかなり高い確率で親子関係は判定できます。
また、A子さんのように、そもそも妊娠する可能性がない女性もいます。
最高裁は、未だに民法733条は違憲ではないとしていますが、どう考えても不合理な規定です。
 
岩城弁護士も書いていますが、おそらく、戸籍係の担当者は法務省に「お伺い」をたてて受理を決めたものと推測されます。
 
このようなケースがあることを知ると、たとえ最高裁の判例があっても、おかしいことに対し最初からあきらめてはいけないと思いました。
とても勉強になりました。
 
 
 
 
 
 
 

「離婚について」という講演をしてきました。

 
(女性弁護士の法律コラム NO.154)
 
1月20日午前、京都市ひとり親家庭支援センターで「離婚について」というタイトルで講演を行いました。
離婚に関する法律の内容や手続きなど、基礎的なことをお話しました。
 
講演の準備をする中で統計を調べてみると、2012年の離婚件数は、約23万6000組。
これは、2分13秒に1組の夫婦が離婚していることになります。
また、同居期間で比べると、5年未満の離婚件数が最も多く、次いで5~10年未満が多いことがわかりました。
ただ、20年以上という中高年の離婚件数も横ばいで目立ちます。
 
約90%の夫婦が協議離婚により離婚しているという実態は、数字的には以前からあまり変わっていないというのが実感です。
 
午後は、引き続き個別の法律相談を受けました。
やはり一人ひとりの悩みや抱えておられる問題は様々でした。
「こんなこと尋ねてもいいだろうか」と思わず、気軽に法律相談に来ていただきたいと思いました。

親と子どもの関係について

 
(女性弁護士の法律コラム NO.153)
 
最近、父親と子どもとの関係をめぐる最高裁の判決が相次いで出された。
その内容は、事務所のトップページの「最新判例」で紹介しているが、以下の2つだ。
 
●2013年12月 性別を女から男へと変更した父親に、人工受精によって誕生した子をその父親の子と推定
●2014年1月  認知した父親でも認知後無効を主張できる
 
前者の判例は、生物学的には明らかに子どもができない夫婦の間に人工授精によって誕生した子をその夫婦の子と認定した。
性同一障害特例法ができたことを背景に、生物学的な関係がない親子に社会的な意味での親子関係を認めたことになる。
他方、タレントのMさんは、自分の卵子と夫の精子を用いて、アメリカで代理出産をしたが、最高裁は平成19年3月、Mさんの実子とは認めないという判断を下した。
生まれた子は、生物学的意味では明らかにMさん夫婦の子であるにもかかわらず、Mさんが懐胎・出産したのではないという事実で否定した。
わが国では「代理出産制度」が認められていないというのも理由に揚げられているが、生まれてきた子どものことを考えると、このような扱いは妥当なんだろうかと思ってしまう。
 
次に後者のホットな最高裁判例は、父親が一度認知をしても、その後、反対事実を主張してその認知の効力を覆すことができるとの初判断を示した。
他方、「夫の子」と推定されて誕生した子どもについては、誕生したことを知ってから1年が経過してしまうと、原則として「自分の子でない」と主張することはできない。
子どもの法的な地位を早期に安定させる趣旨であると言われているが、そうであれば、認知を受けた子どもも同じではないのか。
 
私自身としては、冒頭の最高裁判例との関係で、上記の2つの事柄がなんとなく統一的に理解できず、わりきれない思いが残る。
 
民法制定当時には考えられなかったような多様な家族関係が存在する。
だから、現在は過渡期なのかなと思う。
いずれにしても、何の罪もない子どもが平等な取り扱いがなされるような法解釈や法制度の整備が早急に求められる。
 
福山雅治主演の「そして父になる」という最新映画。
取り違えられた子どもを長年育てた後にその事実を知った夫婦・家族の苦悩がテーマの映画だと聞いた。
観たいと思っていたが、観逃してしまった。
テレビで放映されたら、絶対に観ようと思っている。
 
 
 
 

 
(女性弁護士の法律コラム NO.152)
 
12月15日の日曜日、日本弁護士連合会男女共同参画推進本部と京都女子大学法学部との交流会にオブザーバーとして参加しました。
 
私が弁護士となったのが1982(昭和57)年。
この年の日本の女性弁護士数は477人、弁護士全体の4.0%でした。
それが、2013年には5936人となり、全体の17.7%を占めています。
しかし、約30年の間の女性弁護士の増加は著しいものの、ここ数年は、大きく増加していません。
その背景には、司法試験制度や弁護士の就職が厳しい現状があるようです。
そんな中で、今回、日本の女子大で初めて法学部を持った京都女子大学と、日弁連男女共同参画推進本部が交流会を持つという企画があることを知り、参加させていただきました。
 
京都女子大学に法学部ができたのは、2011年4月。今年の三回生が第1期生です。
女性の視点を取り入れた独自の法学教育を実践されており、一般の法律科目以外に、「ジェンダーと法」など女性特有の社会問題に関する講座も設けられています。
また、教員も男女ほぼ同数です。
更に、法学部校舎の中には、立派な模擬法廷も設けられていました。
 

 
学部内の模擬法廷を見学させていただいた後、教員や学生さんらと交流会がありました。
学生さんたちからは、弁護士の仕事の実際や、どんな弁護士になってほしいか、女性弁護士の就職状況など熱心に質問が出されました。
 
今回、交流会に参加して、女性の視点からも法律が学べるこのような大学は魅力的だと感じるとともに、もっと多くの女性に弁護士を目指してもらえるよう、若手弁護士の就職やその後の育成を真剣に考えていかなければならないと思いました。
 
 
 
 
 
 
 
 

 
(女性弁護士の法律コラム NO.151)
 
私が弁護士になって約30数年の間には、いくつかの女性労働者の権利に関する裁判に関わることができた。
弁護士というのは「こんな裁判をやってみたいなあ」と思っても、闘う事件と当事者との出会いがなければ裁判をすることができない。
その意味で、今から振り返ると、私は幸せだったと思う。
 
そんな、これまで関わってきた女性労働者の権利に関する裁判の中で、弁護士になって最初に関わったのが、保育園に勤務していたI保母の雇止め事件だった。
 
期限付き雇用で労働者を雇い入れ、更新を繰り返したあげく、いらなくなると雇止め。
そんなやり方は当時から横行していたが、何回も契約更新された事案については、裁判上、救済されるケースも少なくなかった。
ところが、I保母は、期限付き雇用の1回目の更新時に更新が拒否された。
前例のない裁判だった。
 
裁判が始まった1986年当時、私は弁護士4年目。
弁護団を組み、1989年4月に京都地裁で得た判決は、I保母全面勝訴。
合理的理由のない期限は無効であるという画期的な判決だった。
そして大阪高裁で和解解決。
 
あれから24年。
先週、24年ぶりに、Iさん、当時、福祉保育労働組合として支援してくれていたKさん、そして弁護団のうち女性弁護士3人が集い、「ロカンダきだや」という町屋のイタリアンレストランで「女子会」を行った。
皆、平等に、24年という歳月が流れ、それぞれ山あり谷ありの人生を送ってきたが、それでも、弁護団会議でケンケンガクガクの議論をしたことや様々なエピソードなど、どこまで正確かは誰もさだかではないが、それなりによみがえってきた。
 
おいしい豆料理の話にも花が咲き、これからもこういう機会を持つことができそうな予感がしている。
 

 
(女性弁護士の法律コラム NO.150)
 
9月4日最高裁が民法の婚外子の相続分差別規定が憲法違反であると判断してから既に約2ヶ月以上経過しました。
ここに来て、11月12日、やっと政府は、婚外子の相続分を婚内子と平等に認める民法改正案を閣議決定し、国会に提出しました。
 
最高裁が違憲だと判断したのですから、今国会にいち早く法案が提出されるべきでした。
それを阻んだのは、自民党内の「正妻の地位を脅かしている」「家族制度が崩壊する」などという強硬な反対意見でした。
自民党内の保守系議員たちは、これまで婚外子差別や夫婦別姓の議論が出るたびに、「家族制度が崩壊する」とか「日本の伝統」などという言葉を口にして反対してきましたが、明治時代の前近代的な価値観に固執しているにすぎません。
 
それ以上に、国会議員一人一人の価値観がどうであろうと、今回、司法である最高裁が「違憲」と判断した以上、国会がそれに従った処理を行うのは当然であり、それが憲法が定める三権分立にほかなりません。
「最高裁の暴走」などという批判は論外です。
 
結局、自民党は、婚外子差別是正の法案は提出せざるを得なくなりましたが、法務省が予定していた、出生届に「嫡出子」「非嫡出子」の記載を義務付けている戸籍法の改正については、あくまでも「区別は必要」「最高裁は、戸籍法は違憲と判断していない」などとして了承しませんでした。
 
自民党は、改憲草案で、憲法24条に、新たな項をもうけ、「家族は、社会の自然かつ基礎的な単位として、尊重される。家族は、互いに助け合わなければならない」と規定し、現行憲法の「個人」の尊重よりも「家族」を社会の基礎単位にしようとしています。
 
世界の流れにも反する時代錯誤的な考えにほとほとあきれてしまいます。
時代の逆行は絶対に許せません。
 
 
 
 

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