(女性弁護士の法律コラム NO.109)
検察官が刑事事件の裁判官になったり、刑事裁判官が検察官になったりする人事交流(いわゆる「判検交流」)が今年度から廃止されたことがわかった(2012年4月26日付け朝日新聞)。
裁判官と検察官の距離の近さが「裁判の公正をゆがめかねない」との批判を受け、法務省が「誤解を生むような制度は続けるべきではない」と判断した。
要するに、判検交流というのは、昨日まで裁判官だった人が、検察官となって被告人の処罰を求め同僚裁判官がその訴訟を担当する、そして任期が切れるとまた裁判官に戻るなど、常識的にみて「どうよ?」と思うようなことが1970年代からずっと続いてきた。
この判検交流は、刑事事件だけでなく、民事の分野でも、裁判官が訟務(しょうむ)検事となって行政訴訟や国賠訴訟の国側の代理人をつとめるという形で行われていた。
これまで弁護士会はこのような判検交流に反対してきたが、検察官の証拠改ざんなどが大きな社会問題となる中で、「廃止」になったのだろう。
朝日新聞の書き方は、「刑事事件の公正に配慮」となっているが、民事事件だって同じ。
民事分野での判検交流も廃止されたのかな?
女性弁護士の法律コラム
(女性弁護士の法律コラム NO.108)
内閣府が、4月20日、「男女間における暴力に関する調査」の結果を発表しました。
この調査は、2011年11月から12月にかけて、全国の成人男女5000人を対象に実施されたものです。
それによると、結婚したことがある女性の32.9%が、夫から身体的暴力や言葉による暴力を受けたことがあると回答しました。
しかし、被害女性の41.4%は、周囲に相談しておらず、子どもへの配慮や経済的不安から泣き寝入りするケースが目立っています。
DV法が制定されてからもう10年以上が経過するというのに、「3人に1人」という数字には驚きました。
そして、多くの被害者女性は、そのことを誰にも言わず、耐えていることにも。
すぐに離婚や保護命令などの法的措置をとる決断がつかなくても、世間体などを気にせず、いつでも公的機関や私たち弁護士にご相談ください。
(女性弁護士の法律コラム NO.107)
私たちが、家裁で、別居中の夫婦の生活費である婚姻費用や離婚後の子どもの養育費を決める時、参考にするのが「養育費・婚姻費用の簡易算定方式・簡易算定表」で、2003年3月に判例タイムズという雑誌の1111号に発表されたものである。
家裁では、調停委員や裁判官、弁護士もこの表を使って調停などを進め、また、離婚に関する本などでも紹介されているので、法律相談に来られる方の中にもよく知っている人も見られる。
その意味で、実務にはかなり定着していると言えよう。
しかし、発表から約9年も経った現在、この表には構造的に問題があり、そのため算定される金額が低額で、母子家庭の貧困の一因ともなっている。
そこで、日本弁護士連合会は、3月15日これに対する意見書を取りまとめ、3月22日付けで最高裁判所および厚生労働大臣宛に提出した。
意見書の内容については、ここで紹介するスペースがないので、日弁連のホームページで読んでほしい。
私たち弁護士も、安易にこの表に依拠するのではなく、子どもたちのための生活実態に合った金額を決定していく努力が求められる。
(女性弁護士の法律コラム NO.106)
昨日4月15日は「良い遺言の日」。
この場合、「ゆいごん」と読むのではなく、「いごん」と読みます。なぜか、法律家の中には、「いごん」と呼ぶ人も少なくありません。
夫婦、特に子どものいない夫婦は、そのどちらかが亡くなると、残された配偶者と亡くなった人の親、親が死亡している時には兄弟姉妹が法定相続人となりますから、争いが起きることも少なくなく、遺言を書いておかれた方が良いことは、当事務所の法律コラムでも紹介しています。
また、何人かの子どもの中で特に遺産をたくさん残してあげたいと思う子どもがいる場合、正式な夫婦でない男女の間に生まれた子どもがいる場合、息子の配偶者など他人に遺産をあげたいと思う場合などは、特に遺言を書かれることをお勧めします。
「おひとりさまの老後」の著者上野千鶴子さんは、「遺言は、死ぬためにではなく、生きている自分のために書くものだ」、「生きているかぎり人間関係も変われば、考えも変わる」、そして「人間関係が(それに男も)変わるたびにバージョンを書き換えてきた」と書いています。
そう、遺言は、気楽に気軽に書きたいものです。
私たち弁護士がそのお手伝いをします。
(女性弁護士の法律コラム NO.105)
刑事事件におけるメモの重要性。
何か犯罪の容疑で逮捕勾留され、身に覚えがないにもかかわらず、警察官が机をドン!とたたいて「お前!早く本当のことを言わんかい!」などと怒鳴って暴力を振るうということは決してテレビドラマや映画あるいは戦前の警察での出来事ではない。
●2006年3月兵庫県警に詐欺容疑で逮捕された女性
「20分間、怒鳴られっぱなし」「警察の都合のいい回答をするまで続くと思うと、絶望的な気分になる」
●大阪地裁所長襲撃事件で強盗致傷罪に問われた男性(無罪確定)
「ヘタレと何度も言われバカにされた。お前には人間の血が流れていない」「暴力を振るわれ口の中がキレて血が出るし一瞬息ができなかった」
いずれも近年明るみに出た警察内での違法な取調べの実態である。
これらが明るみに出たのは、実は、彼らは、留置場の中で、弁護士が差し入れた「被疑者ノート」と呼ばれる取り調べの様子を日記風に記入できるノートをつけていて、これが裁判で証拠として採用されたからである。
この「被疑者ノート」というのは、弁護士会が作成したものであるが、別に普通のノートや手帳に書き綴ってもかまわない。警察官による暴言や暴力があっても、なかなか信用してもらえないのが現状である。このように取調の状況をメモしておくことは密室での自白強要を防ぐ重要な手段である。
但し、このようなノートは裁判所が必ず証拠として採用するとは限らないので、冤罪を無くすためには、現在、議論されている取調中の録音・録画(取調べの可視化)などが全面的に実施されなければならない。
(女性弁護士の法律コラム NO.104)
虐待などで家庭に居場所を失った10歳代後半の少女を一時的に受け入れる子どもシェルター「はるの家」が、4月2日京都市内に開設された。関西では初めての施設で、京都市のNPO法人「子どもセンターののさん」が運営。(2012年4月12日付け読売新聞朝刊)
子どもシェルターは、全国7都府県8か所にある。
児童相談所などの公的な施設の限界を補うもので、もちろん児童相談所と連携をとる。
「はるの家」では、個室で2~3週間の滞在を想定。定員は6人で、24時間態勢でスタッフが寄り添う。
虐待を受けて家庭を飛び出したり、行き場のない少女らが本当に安心して過ごせる場所として期待される。
問い合わせは、同NPOの事務局(075-254-8331)へ。
(女性弁護士の法律コラム NO.103)
「 メモの重要性」という意味で記憶に残る離婚事件がある。
A子さんは、家の中のすべてを取り仕切って彼女を女中扱いする同居の姑とそれに追従する夫の態度に耐えられず、別居した。
私がA子さんの代理人となって離婚訴訟を提起すると、夫は弁護士をつけず本人訴訟。
そして、夫は、母は妻が言うようなことはしていない、自分も今でも妻を愛している、妻は精神的な病気ですべて妄想であるなどと繰り返し述べ、「愛している」「帰ってきて欲しい」という内容の妻宛の手紙も裁判所に提出したりした。
このような夫の態度から、裁判官の言葉の端に「本当に妻と姑との間に確執があったのか」との疑念も見え隠れし始めた。
そこで、A子さんに「日記とかつけてない?」と尋ねると、日記はつけていないが、家計簿をずっとつけていて、その家計簿の各頁の余白にその日の出来事や思いを簡単に記していたものならあることがわかった。
早速、数年分の家計簿を持って来て読ませてもらうと、よほど姑との関係がつらかったようで、姑の言動やA子さんのつらさ・苦しさが、短い言葉ではあったが、リアルに記されていた。それを証拠として提出したところ、裁判官の態度が一変したことは言うまでもない。
夫婦の間の出来事は、夫婦しかわからないことが多く、離婚事件でも立証の決定打に欠けることも少なからずある。
そんな時、日記とまではいかなくても、A子さんのように日々の出来事を家計簿の余白などに記しておくことは、非常に有効である。
(女性弁護士の法律コラム NO.102)
昨今の情報量の多さとそれに反比例するような自分のモノ忘れの速さに、メモの重要性は日々痛感するところである。
ところで、日常の事件においてもメモはきわめて有効なので、若干紹介してみたい。
~妻のメモも残業の証拠~
労働者の残業時間を把握するのは、本来、使用者の責任であるが、タイムカードがない職場も少なくない。
このような職場で働く労働者が、未払いの残業代の請求や長時間労働による病気について労災申請をするような場合には、残業時間の証明が重要になる。
そんな時、メモを有力な証拠とした裁判例があるので紹介しよう。
大阪の男性が未払いの残業代を求めた事件で、残業時間を裏付ける客観的な証拠はなかったが、裁判所は、毎晩夫の帰りが遅いことを心配した妻が「01年9月27日午前2時半」などの帰宅時間を書いたメモや営業所の戸締まり記録・報告書などの間接的な証拠から残業を認めた(2005年3月大阪地裁、2005年12月大阪高裁)。
また、残業代や休日出勤分の賃金を払ってもらえなかった男性が退職後、会社を訴え、東京高裁(2008年5月28日判決)は、男性が手帳に書いていたメモで残業時間を認定した。
裁判の中で会社は「手帳の記載は信用できない」と主張したが、一審の横浜地裁は「労働時間管理を行うべきなのは会社、疑義があるなら会社が根拠となる記録を示すべき」と指摘した。
家族の皆さん、夫や父親が仕事で毎晩遅く帰って来るような時には、その帰宅時間もメモしておきましょう。
(女性弁護士の法律コラム NO.101)
身寄りのない人に代わって京都市が家庭裁判所に成年後見人の選任を申し立てる「市長申立」の件数が急増している(2012年4月6日京都新聞夕刊)。
市によると、市長申立の件数は、2004年度は4件だったが、10年度は41件に増え、11年度も2月時点で90件と前年度の倍以上に急増。
市内の一人暮らしの高齢者は10年に7万人を超えており、支える家族がいない高齢者が増えていることが申立急増の要因になっている。
成年後見については、本人や配偶者、4親等内の親族らが申し立てることができ(民法7条)、通常はその人らによって申し立てられることが多い。
しかし、身寄りのない高齢者については、老人福祉法32条によって市町村長にも成年後見の申立をする権限が与えられている。
認知症などで判断能力が低下した高齢者を悪徳商法などの詐欺商法から守るためにも成年後見制度は有効である。
なお、京都市では、4月から下京区のひと・まち交流館京都内に「成年後見支援センター」(電話075-354-8815)を開設したり、低所得者向けに申立費用や後見人の報酬の公費負担の対象も広げたり(問い合わせは市長寿福祉課075-251-1106)と、後見制度の利用を拡大していくとりくみを進めている。
近所に身寄りのない高齢者で心配な方がいらっしゃる場合には、是非、ご相談ください。
こんな時、「おせっかい」も大切ですよね。
※成年後見制度については、事務所ホームページ「法律コラム・その他 成年後見制度」を参照してください。
(女性弁護士の法律コラム N0.100)
今日は、依頼者と一緒に、交通事故の事故現場に行って来ました。
交通事故の事件を受任した場合、被害者側で過失がゼロの事件でない限り、事故の現場には1度は行って写真を撮るようにしています。
あらかじめ警察から実況見分調書を取り寄せ、それにも写真が添付されているので、現場の様子はおおよそ検討がつきますが、やはり実際に自分で見た方が現場の状況がよく頭に入り、示談交渉する時や裁判所に説明する時に役に立ちます。
1週間前の天気予報を見て、雨予報じゃないと確認して「今日」を選んだのですが、事務所を出る時に、急な雨。
でも、幸い現場に着いたら晴れて、車が頻繁に往来する中、その隙間を狙って写真を撮って来ました。
(女性弁護士の法律コラム NO99~遺言~)
このブログで「生前準備」とか「尊厳死」のことを書いたところ、友人が「自分が死んだら散骨してほしいと思ってるんだけど」と手紙をくれた。
私も自分が死んだ時には葬儀や墓はいらない。登山が好きなので、遺骨もできれば、どこかの山に散骨してほしいと思っている。
散骨とは、火葬場で焼いた後の遺骨(焼骨)を粉状(遺灰)にして、大地や海への自然に帰す葬送の一方式である。
最近、墓への埋葬などの形式や慣習にとらわれず、自分の死後は遺骨を散骨してほしいと希望する人が増えているようである。
「墓地、埋葬等に関する法律」4条は、遺骨を墓地以外の区域に埋蔵してはならないと定めているので、この法律との関係が問題となる。
しかし、厚生労働省がこの法律は遺灰を海や山に撒く葬送は想定しておらず対象外という見解を発表したため、節度を持った散骨は違法ではないということになっているよう。
ところで散骨の意思表明の方法であるが、遺言などで抽象的に「○○へ散骨して」と第三者に託しても、その人がどうしたらよいかわからず困ることもあるので、生きているうちに信頼できる人に費用も含めて具体的にお願いし、そのことを遺言に書いておく方がよいのではないだろうか。
(女性弁護士の法律コラム NO98)
旅先で何気なく手にとった女性雑誌に「事実婚のススメ」というタイトルの対談が載っており、思わず読んでしまいました。
その中で、事実婚の場合、夫婦が住民票上、同じ住所で届けると続柄欄に「妻(未婚)」と記載されるとありました。
今まで事実婚の場合には「同居人」と記載されるとばかり思っていました。
初めて知ったことだったので、京都でも同じ扱いなのかなあと思い、早速、区役所に電話で尋ねてみました。
区役所の担当者いわく、本人双方が希望するなら「同居人」でも「妻(未届)」でもどちらでもできるとのこと。
但し、「妻(未届)」という表示は、本人双方が未婚であることが前提で、法律上の配偶者が別にいる時はできませんとしつこく言われました。
なるほどね。よくわかりました。
(女性弁護士の法律コラム NO97~離婚~)
夫婦の間で「ここまでするか!」と思う事件に時々出くわします。
協議離婚は、離婚届を役所に提出することによって成立しますが、役所の戸籍係は受理に際して書類上の形式的な審査しかできませんから、夫が勝手に離婚届を出しても一応受理されてしまいます。
私が扱った事件だけでも、過去にこのような事件が2件ありました。
どちらも夫が愛人を作って家を出、妻に対し離婚を迫っていたケースでした。
妻の同意がないのに離婚届を勝手に作成して出すことは当然犯罪になります。私文書偽造・同行使罪(刑法159条、161条)です。時間はかかりましたが、夫は処罰されました。
また離婚自体も無効なのですが、離婚無効を認めてもらって戸籍を元に戻すには、家庭裁判所に対し調停を申し立て、それでも夫が事実を認めなければ訴訟を起こして判決をもらう必要があります。
このようなことが起きる心配のある方は、役所に「離婚届の不受理届」を提出しておきましょう。
(女性弁護士の法律コラム NO.96~相続~)
以前のブログ(2010年7月15日付け)でも、尊厳死のことを書いたことがありました。
尊厳死とは、一般的には延命治療の拒否ないし中止のことを言います。
尊厳死を希望する場合には、意識がはっきりしている間に、書面に書いておいたり、家族の了解を得ることが大切であることは前にも書いたとおりです。
書面の書き方ですが、本などを読むと「いっさいの延命治療はいりません」などの文例が見受けられます。
しかし、今回、中村医師の「大往生したけりゃ 医療とかかわるな」を読むと、それでは「延命」の受け取り方が人によって異なるので正確ではなく、内容の具体性が必要と書いてありました(同書p146)。
中村医師によると、下記の各項目について意思表示が必要だそうです(同書P160)。
①心肺蘇生(心臓マッサージ、電機ショック、気管内挿管など)
②気管切開
③人工呼吸器
④強制人工栄養(鼻チューブ栄養、胃ろうによる栄養、中心静脈栄養)
⑤水分の補給(末梢静脈輸液、大量皮下注射)
⑥人工透析
⑦輸血
⑧強力な抗生物質の使用
⑨その他
各項目内容の具体的な説明もされていますので、興味のある方は1度読んでみてはいかがでしょう。
(女性弁護士の法律コラム NO95~相続~)
自分の死に備えて遺言や葬儀の内容などをあらかじめ決めておく「生前準備」について、経済産業省は今年1月初めて調査を行いました(3月14日NHKニュース)。
その結果、「葬儀」について「すでに準備している」と「現在、準備中」という答えが合わせて4.4%だったのに対し、「準備すべきだがしていない」が35.7%。「遺産などの相続方法」は「すでに準備」と「準備中」が合わせて11.1%で、「準備すべきだがしていない」が45.7%と半数近くに上ったとのことでした。
「生前準備」については、葬儀の方法や遺産相続だけでなく尊厳死や散骨の問題などもあって、「誰に相談してよいか分からない」などの声も出ているそうです。何かに自分の希望を書いておくことが大切ですが、せっかく書いてもそれが実際に効力が生じなければ不本意な結果になってしまいますね。
「生前準備」を考えている皆さん、是非、1度ご相談ください。
(女性弁護士の法律コラム NO.94~離婚~)
家裁の待合室で調停の順番を待っていたら、前の椅子に座っていた女性が、たまたま隣に座っていた女性に対し、「調停って3-4回くらいで終わるんですかね?」と尋ねていた。
こういう質問は、相談者や依頼者からよく聞かれる。
家裁の調停と言っても離婚だけではないが、離婚調停に限っても、そもそも離婚や親権に争いがあるのか否か、慰謝料や財産分与の争いなのか、などによって回数は一概に言えない。
当事者の言い分や条件が異なっていても双方で多少検討する姿勢がある場合、3-4回くらい調停を開いても歩み寄りがなければ、不成立となるだろう。
逆に、双方が少しずつでも歩み寄る姿勢があれば、家裁は1年位(8回くらい?)でも調停をしてくれる。
ただ、どんなに長く調停を続けても、調停はあくまで話し合いだから、当事者のどちらかがイヤと言えば成立せず、それから離婚訴訟を起こさなくてはならない。
その見きわめが弁護士の経験かもしれない。
(女性弁護士の法律コラム NO.93~労働~)
3月7日衆議院厚生労働委員会で、民主・自民・公明3党は、労働者派遣法改定の政府案をいっそう骨抜きにした改悪修正案を、審議なしで可決した。
2008年秋のリーマンショックの際の大量の「派遣切り」が大きな社会問題となり、このような安易な「派遣切り」を2度と許してはならないと、民主党は派遣法の改正を表明して2009年政権交代を果たした。
その後提案された政府案は、派遣切りで最も問題となった製造業への派遣は原則禁止としたものの、短期契約を繰り返す常用雇用は対象外とするなど、きわめて不十分な内容だった。
ところが、昨日可決された改定案は、その不十分な政府案をいっそう骨抜きにし、登録型派遣と製造業派遣の原則禁止規定を削除し、しかも、違法な派遣があった場合、派遣先が派遣労働者に直接雇用を申し込んだとみなす「みなし制度」については、施行期日を3年も先送りした。
次々と公約を踏みにじっていく民主党。派遣切りされ仕事だけでなく住まいも失った労働者であふれかえった、あの「派遣村」をもう忘れてしまったのか。
参議院での審議はこれから。このような改定案には断固反対の声をあげていかなければならない。
将来の冠婚葬祭に備えて一定額を積み立てる互助会契約を中途解約した際、高額な手数料を徴収することは消費者契約法に反し無効として条項の差し止めなどを命じた判決が、12月13日京都地裁で下されました(2011年12月14日付け京都新聞朝刊)。
訴えていたのは、NPO法人「京都消費者契約ネットワーク」。被告は、冠婚葬祭会社のセレマ(京都市中京区)。
同ネットによると、互助会の解約手数料を無効とする判決は初めて。互助会の中途解約手数料が高すぎるという問題はかなり以前からありましたが、個別事件毎に調停など話し合いで解決されてきたのが実態でした。
消費者にとっては朗報です。
遺言をするには、遺言する能力(遺言能力)が必要です(民法963条)。
これは、遺言の内容を理解していること、つまり自分の遺言が法律的にどのような効果が生じるかを理解する能力です。
裁判では、高齢者、とりわけ認知症など判断能力が低下している人の遺言の有効性が問題となることが少なくありません。
それは、必ずしも手書きの自筆証書遺言だけでなく、公証人が作成した公正証書遺言でも争いが起こり、無効と判断されているケースもあります。
遺言能力があるか否かは、遺言をする時の本人の具体的な状態や遺言の内容などによって総合的に判断されますから、認知症という診断を受けているからと言っても、必ず能力が認められないというわけではありません。
これから遺言を書こうとする場合には、主治医に相談されることをお勧めします。また、本人が遺言を書いている姿ややり取りなどをビデオに撮影しておくことも役に立つかもしれません。
遺言の効力を争う場合にも、主治医の意見が参考となるでしょう。
「店長」という役職名だけつけられて残業代が支払われない、「名ばかり店長」というのがありましたが、今度は「名ばかり裁量労働」です。
裁量労働制を適用され、京都市内のコンピューター会社でシステムエンジニアとして勤務していた男性が、実際は裁量外の仕事をしていたとして、会社に対し、残業代など約1600万円の支払いを求めた裁判で、京都地裁は10月31日約1140万円の支払いを命じました(共同通信)。
裁量労働というのは、仕事の性質上、その遂行の方法を大幅に労働者の裁量に委ねる必要があるため、労働時間の決定などに関し具体的指示をすることが困難な業務のことを言います。労使であらかじめ定めた時間を働いたものとみなすという制度です。
例えば、研究や開発の仕事などがこれにあたる場合があります。
しかし、判決によると、上記事件では、男性は、裁量が認められないプログラミングや営業活動に従事していたと指摘、裁量労働の「要件を満たしていない」と判断しました。
「裁量労働」制のもとで働いている労働者の皆さん、あらためて自分たちの仕事の内容や仕方をチェックしてみる必要がありますね。