(女性弁護士の法律コラム NO.209)
「私は、中立公正を本質とする最高裁の判事の職にあったことを考慮し、単なる政策の当否に関する政治問題については、発言を控えてきました。」
「しかし、国を運営する元となる憲法の大原則に深刻な変更が加えられるとすれば、全く別の問題になります。」
「法律家として、いうべきことをきちんという社会的責任がある、と考えます。」
こう語ったのは、2006年5月から2012年2月まで最高裁判事であった那須弘平さん。しんぶん赤旗のインタビューに答えた(2015年9月8日付け)。
那須さんは、
一内閣の閣議決定で憲法解釈を変更するには限界があり、集団的自衛権行使は違憲といわざるを得ない、
尖閣列島や北朝鮮などの問題は、外交で解決すべき問題である、
憲法前文は、「日本が不戦を約束した誓いの言葉」であり、アメリカ独立宣言、フランス人権宣言に匹敵する、
憲法の理念が破壊されようとしている今、前文の誓いを十分に果たしたと言えるか、国民一人ひとりが自身の良心に問うてみる必要がある、
などと語った。
参議院での安保法案審議が、来週にもヤマ場を迎えると報道されている。
主権者である私たち国民一人ひとりが、大きな反対の声をあげましょう。
女性弁護士の法律コラム
(女性弁護士の法律コラム NO.208)
昨年10月に、最高裁が「妊娠による降格は男女雇用均等法が原則禁止しており、本人の同意がなければ違法」と初めて判断したことをうけて、厚生労働省は、今年3月末、育児休業の終了などから原則1年以内に女性が不利益な取り扱いを受けた場合には、直ちに違法と判断することを決めました。
そして、9月4日、厚生労働省は、妊娠を理由とした解雇をやめるよう求めた勧告に従わなかったとして、男女雇用機会均等法に基づき、看護助手の女性を解雇した茨城県内の病院名を公表しました(2015年9月5日付け京都新聞朝刊)。
マタニティーハラスメントで企業名を公表をするのは、初めてです。
勧告に従わなかった病院は、茨城県牛久市の「牛久皮膚科病院」です。
看護助手の20代女性が、院長に妊娠を報告したところ、約2週間後に「妊婦はいらない。明日から来なくていい」と突然解雇を告げられたそうです。
この病院は、労働局から口頭や文書で指導されても、解雇を撤回せず、厚生労働大臣が初の勧告を行いましたが、「均等法を守るつもりはない」などと答えたため、企業名公表に踏み切ったとのことです。
マタハラがこれほど社会問題化しているにもかかわらず、まだまだ職場の中ではマタハラが横行していることを痛感しました。
企業名公表が、マタハラは違法であることの認識を広めることやマタハラ抑止に働くことを期待します。
被害にあった場合には、 泣き寝入りせず、声をあげていくことが大切ですね。
(女性弁護士の法律コラム NO.207)
とうとう、元最高裁長官の口からも、安保法案は「違憲」の発言がなされた。
元最高裁長官山口繁氏は、8月3日、共同通信の取材に応じ、安保法案について「集団的自衛権の行使を認める立法は憲法違反と言わざるを得ない」と述べた(2015年9月4日付け京都新聞朝刊)。
山口氏は、1997年10月から約5年間、最高裁長官を務めた。
政府や与党が1959年の砂川事件最高裁判決を法案の合憲性の根拠として持ち出していることから、私は、最高裁判事経験者は、このような政府の見解をどのように思っているのだろう、元裁判官は誰も発言しないのだろうか、などとずっと思っていた。
多数の憲法学者が「違憲」と指摘されていることについて、高村自民党副総裁は「憲法の番人は最高裁であり、憲法学者ではない」と強調した。
しかし、ここに来て、その「憲法の番人」である最高裁の元長官が初めて意見を表明した。
画期的なことだし、それほどまでに現在の政府や与党のやり方が無茶苦茶だということの現れだ。
山口氏は、砂川判決に関し、当時の時代背景を踏まえ「集団的自衛権を意識して判決が書かれたとは到底考えられない。憲法で、集団的自衛権、個別的自衛権の行使が認められるかを判断する必要もなかった」と語った。
更に、
従来の解釈を変えるなら「憲法を改正するのが正攻法」
こうした憲法解釈変更が認められるなら「立憲主義や法治主義が揺らぐ」
などとも述べた。
政府・与党の独裁政治に、多くの人が声を上げ始めている。
安保法案が廃案しかないことは明らかだ。
(女性弁護士の法律コラム NO.206)
Eさんの事件を担当し始めて、途中、空いた年月はあったものの、もう数年が経過する。
長いつきあいになった。
Eさんは、60代後半で、一人暮らしの女性だ。
通常、事件を担当していても、依頼者のプライバシーのことは、事件に必要な範囲あるいは雑談程度にしか聞くことはない。
Eさんも、高齢者の域には入ってきたが、パートで頑張って働いていると聞いていたので、普通に生活しているものと思っていた。
ところが、最近になって、借家の家賃を滞納していることがわかり、相談を受けた。
必然的に家計状況を尋ねることとなり、かなりの金額の家賃滞納と、ほかにも借金があることがわかった。
元々、計画的に金を使えない性格であることは、知っていたが、反省して、堅実に生活しているものと思っていた。
「食事はどうしているの?」と尋ねると、節約のため、ほとんど毎日おにぎりなどですませているとのこと。
それでも「葬式代だけは貯めてますから」と言う彼女。
「死んだ後より、生きてる今の方が大事じゃないの!」と腹が立ったが、日本人やなあと哀れささえ感じた。
お中元でいただいたサラダ油があったので、それをさしあげたら、「これで、もやし炒めができる」と嬉しそうだった。
Eさんは大金を手にしていた過去もあり、自業自得と言えば、それまでだが、高齢になり、今はまだ元気で働けているが、これから先が心配だ。
(女性弁護士の法律コラム NO205)
日本航空の女性客室乗務員の神野知子さんが、妊娠中に地上勤務での就労希望を却下されて無給休職を命令されたのは、男女雇用機会均等法や労働基準法に違反するマタニティハラスメントだとして、2015年6月16日、東京地裁に休職命令の無効と未払い賃金などを求めて提訴しました(テレビ・新聞報道)。
日航には、妊娠中、休職するか、地上勤務に転換するかを選択できる「産前地上勤務制度」があります。
しかし、2008年、会社は「生産性の向上」を口実に、地上勤務は「会社が認める場合に限る」と規定を改悪しました。
妊娠した神野さんは、昨年8月25日、産前地上勤務を会社に申し出ましたが、会社は「空いているポストがない」として9月から休職を命じました。
休職中は、無給となり、勤続年数にも反映されません。
日航は、2008年6月、厚生労働省から、子育てサポート企業「くるみん認定」を受けています。
また、経済産業省からは、今年3月、女性活躍推進に優れた上場企業「なでしこ銘柄」に認定されています。
ところが、実は、「くるみん認定」を受けた2ヶ月前の2008年4月に、前記したとおり、産前地上勤務制度を改悪していたのです。
労働基準法65条3項では、妊娠中の女性労働者から請求があれば、軽易な業務に転換させなければならないとされています。
また、男女雇用機会均等法9条3項では、妊娠、出産等を理由とした不利益取扱いを禁止しています。
日航には、妊娠した客室乗務員に与えるべき「軽易な業務」がないのでしょうか。
マタハラを許さないこの裁判は、日航だけでなく、すべての女性労働者につながる重要な闘いだと思います。
(女性弁護士の法律コラム NO.204)
昨夜、フジテレビ系列の番組「ホンマでっか!?TV」を初めて観た。
新聞のテレビ欄に「弁護士の意外な使い方」という小見出しがついていたので、どんな内容かと思い観てみた。
男女問題に詳しいという女性弁護士が「幸せな結婚生活を送るための弁護士の意外な使い方」というテーマで解説していた。その主な内容は・・・
第3位
結婚後に金銭感覚のズレが問題になることが多いので、結婚前、弁護士に「結婚契約書」を作ってもらう。それに署名しない相手とは結婚しないこともある。
第2位
夫婦関係がこじれ修復したい時には、弁護士に頼んで、夫婦それぞれにカウンセリングしてもらう。
夫から依頼を受けたその女性弁護士は、妻と何回か食事をしたりして親しくなり、話ができる間柄になって夫婦関係修復に貢献したと解説していた。
第1位
結婚後浮気した場合、モメずに解決するためには、浮気相手にはっきり「嫌い」と言って、弁護士に愛人と別れる練習をしてもらったり、別れる場面に立ち会ってもらう。
う~ん。
どれも現実的じゃないし、このようなことに弁護士が関わっているなんて、あまり聞いたことがないなあ、というのが私の率直な感想。
以下、私の感想的コメント。
「第3位」の結婚契約書。
これは、結婚する前に、結婚後のことを色々取り決めしておくもので、このような契約書を実際に作成すれば、それは法的には有効である。
弁護士が関われる可能性はある。
でも、外国では、このような書類を作るカップルも少なくないらしいが、日本では、ほとんど例がないんじゃないかな。
「第2位」の夫婦関係修復のためのカウンセリング。
そもそも弁護士にカウンセリングの能力があるのか疑問。
仮に、能力があったとしても、夫婦双方に関わってしまうと、その後、結局、夫婦関係がこじれて離婚に発展した場合には、どちらの代理人にも付けないことになってしまう。
夫婦でカウンセリングを受けるなら、専門のカウンセラーの所に行った方が良いんじゃないかな。
「第1位」の愛人と別れるための練習や立ち会い。
愛人とトラブルになった時には、もちろん弁護士が代理人として交渉などすることはある。
でも「別れ方の練習」なんかしないよ~
(女性弁護士の法律コラム NO.203)
憲法9条改悪に反対する「明日の自由を守る若手弁護士の会」(略称アスワカ)の若手弁護士を講師として、お茶を飲みながら、気楽に憲法を学び語る「憲法カフェ」が全国各地で開かれている。
そして、京都府宇治市でも、子ども3人を育てる中村あゆ美さんが、保育園のママ友と、お茶会のような雰囲気の中で憲法を学ぶ「サクッと憲法カフェ」を開いた(2015年5月3日付け京都新聞朝刊)。
私も2014年11月16日付けの当ブログで、女性誌「LEE12月号」が憲法カフェのことを記事として掲載していることを紹介したが、中村さんも、各地の憲法カフェがファッション誌などで取り上げられているのを見て企画したそうだ。
近所の集会所で開催し、23人が参加。
憲法について自由に意見を出し合った。
中村さんたちは、大切なことは憲法に対して思うことを臆病にならず話すことだと信じる。
「普通のお母さんが憲法を語ってもおかしくない。そんな自由な場所が広がってほしい」と
語る。
私たち弁護士は、大学でも司法試験の勉強でも憲法を学んできた。
でも、普通の人たちは、憲法を読んだこともない人が圧倒的多数であろう。
他方、今の国会では、改憲派が多数を占めており、「戦争する国」へと進みつつある。
「憲法」って「読んだことない」「知らない」では済まされない社会になっている。
そんな普通の人たちが、男女を問わず、老いも若きも、気軽に集まって、憲法を学び語る「憲法カフェ」のような場がもっともっと増えていったらイイナ。
(女性弁護士の法律コラム NO.202)
4月25日(土)の午後は、京都弁護士会館で、同会と日本弁護士連合会の共催で、講演会「『積極的平和主義』を問い直す」が開催された。
開場時間の午後1時少し過ぎに会場に行くと、もう補助椅子を出さなければならないほどのたくさんの聴衆が来場されていた。
第1部は、元自衛官の泥憲和(どろ のりかず)さんの講演。
泥さんは、中卒の1969年に陸上自衛隊入隊し、三等陸曹で退官したという経歴の持ち主。
自公が積極的平和主義の根拠として言う「危機」や集団的自衛権行使の「歯止め」がマヤカシであることをわかりやすく説明。
フィリピンのミンダナオ島では、日本人(JICA=ジャイカ)が武装なき停戦監視で学校再建などいかに重要な役割を果たしたか、そして集団的自衛権を導入することは日本への信頼を失わせることだと強調された。
また、自衛隊の機関誌「朝雲」では、安倍内閣に「もっと冷静沈着になれ」という記事が掲載されているとのこと。
更に、元自衛隊の幹部らが、あちこちの集団的自衛権に反対する集会で発言されていること。
などなど、普段ではなかなか聞けない話が語られ、実に面白かったし、勉強になった。
(女性弁護士の法律コラム NO.201)
日本の裁判は、3審制で、例えば、離婚訴訟であれば、家裁→高裁→最高裁と3回裁判を受けることができます。
ただ、最高裁は、上告理由がかなり制限されていますので、事実を争うことができるのは、2審までです。
しかも、離婚事件のような場合、家裁段階で本人尋問などたいていの事実関係の証拠調べは終わっていますので、証拠書類を追加で提出することは可能ですが、高裁でもう1度本人尋問をすることは、申請しても高裁が採用してくれることはかなりマレです。
昨年末頃、控訴審から離婚訴訟を引き受けてほしいとの依頼がありました。
それも、夫が妻に対し離婚を求めている事案での妻側からの依頼でした。
家裁での第一審は、別の弁護士が担当し、夫の離婚請求が認められてしまい、妻にとっては敗訴判決でした。
事案は、夫との夫婦関係の悪化と言うより、長年にわたって同居してきた夫の親からのモラルハラスメントとも言えるような行為が原因での夫婦の別居でした。
彼女の話では、家裁を担当した弁護士は控訴審で判決を覆すことは難しいと言っているということで、私も彼女が持参した家裁の判決だけを読む限り、かなり難しい気がしました。
しかも、控訴の理由書は、控訴してから50日以内に提出せねばなりません(民訴規則182条)。
でも、彼女の必死な姿に打たれ、引き受けることにしました。
理由書提出期限がちょうど年始早々になっていたので、とりあえず期限を2月まで延期してくれるよう裁判所に上申しました。
次に、家裁での訴訟記録一式が手元に届いたので、早速、読んでみました。
彼女が「離婚したくない」「夫婦としてやり直したい」と言っていたからでしょうか、意外にも、家裁段階では、夫の言い分に対する詳細な反論や義親から受けた仕打ちによる彼女の苦しみがにじみ出た書面などは提出されていませんでした。
そこで、家裁での尋問調書を丁寧に読み、「親族の不和」を離婚理由とする過去の判例を調べ、またモラルハラスメントの本も読んで、かなり力を入れて控訴理由書を書き上げ、更に彼女の苦しくつらかった思い、夫への愛情などを書いた陳述書も作成しました。
予想どおり、高裁は第1回で結審しましたが、すぐその日から、裁判官を間に入れた和解(話し合い)が始まりました。
裁判官は、夫の親との関係で彼女が置かれていた状況や気持ちを理解してくれた上で、そのことを含んだ条件をつけて和解離婚を勧めました。
そして、彼女も離婚を決意し、和解離婚が成立しました。
多くのDVやモラハラ被害の女性がそうであるように、同居している時には、彼女には、自分が受けている仕打ちがモラハラであるとは思いもせず、自分を殺し「嫁」として必死につかえてきました。
彼女は、別居後、カウンセリングなどを受ける中で、徐々に、冷静になってそれまでの自分を見直すことができるようになってきたと語っていました。
彼女の事件は、比較的短い期間で終わりましたが、何回も打ち合わせ、高裁への行き帰りの電車の中でも色々話をしたりして、割と「濃い」時間を共有できたと思っています。
もう今の彼女は、ひたすら耐える女性ではありません。
次に会う時がとても楽しみです。
(女性弁護士の法律コラム NO.200)
毎年、この時期になると、京都地裁の敷地の東・南・西の3方にある「しだれ桜」が見事だ。
ただ、今年は、ちょうど満開になる頃に雨が降った日が多かったので、満開になりきる前に、たくさんの花びらが散った。
昨日は、関東では雪が降り、思いがけず桜と雪のコラボレーションを見ることができたようだが、京都も晴天となったが、かなり寒かった。
依頼者のIさんが地裁の桜を見たいと言われたので、一緒にランチをした後、プラプラと地裁周辺を歩いた。
昨日は、地裁の南側にある御所南小学校の入学式で、着物などを着て正装した、たくさんの保護者が、しだれ桜をバックに子どもらの写真を撮っていた。
桜はかなり散っていたが、それでも、まだまだ見応えはあった。
(女性弁護士の法律コラム NO.199)
つくづく高齢者が長生きしづらい社会だと痛感した。
2013年4月13日付け当ブログで書いた難病を抱えた元依頼者のMさんがケア付き住宅に引っ越して丸2年になる。
京都市内中心部からは、かなり離れている場所なので、なかなか訪問することができずにいたが、数日前に久しぶりにMさんから電話をいただいたため、4月1日に会いに出かけた。
Mさんは、80歳。
自分で歩くことはできないが、車椅子に乗って、笑顔で出迎えてくれた。
別居中の夫からの婚姻費用とわずかな年金で、今の住居の費用を支払っているMさん。
そんなMさんに、この住居の保証人となってくれている子どもから、もしMさんが100歳まで長生きし、父親も死亡したりして仕送りができなくなったら、どうするんだ、自分は破産だ、他の子どもにも保証人になってもらえ、なんとかしろというような手紙が届いたという。
別居中の夫がいつどうなるか、Mさん自身が何歳まで生きるか、その時に子どもらはどのように対応するか、その時に今の政治や社会保障はどうなっているか、先のことなどはわからないにもかかわらず、その保証人になった子どもは心配でたまらなくなっているんだろう。
Mさんは、「子どもは、私に早く死ねということでしょうね」とつぶやいた。
今の日本の社会に、もっと豊かな社会保障制度があれば、Mさんも、また子どもも、こんな思いはしなかったはずなのに・・・
親が長生きすることは素晴らしいことであるはずなのに、それが子どもらの手かせ足かせになる・・・そんな社会では絶対にダメだと思った。
翌日、私の不在中にMさんから電話が入り、「とても喜んでいたとお伝えください」との伝言が添えられていた。
行って良かった。
(女性弁護士の法律コラム NO.198)
ある事件の関係で病院にカルテ開示を依頼し、今日の午後、その病院まで出かけることになった。
その訪問先の病院の近所に、私の約10年前の依頼者の方がお店を経営していることを知っていたので、病院に行く前に、初めて立ち寄ってみることにした。
その方は、離婚事件の元依頼者女性で、夫によるDVが原因だったが、1審ではDVが認められず敗訴した。
そのため、大阪高裁に控訴し、控訴審ではDVそして離婚が認められ、逆転勝訴した事件だった。
その意味で、とても印象に残る事件だった。
彼女は、別居後、着物地による洋服・小物・アクセサリーなどを販売する店を開き、子ども二人を育てた。
ブラブラ歩いてその店を見つけ、中に入ると、そこに元気そうな彼女がいた。
「イヤーッ、先生!」「久しぶりやねえ」
子どもさんも既に成人し社会人となっているとのことで、ひとしきり近況話に花が咲いた。
そして、彼女は、11年間店を続けたが、来月には店を閉め、着物地の洋服作りの教室を開くと語った。
「店があるうちに来られて良かった!」
店を経営して、色んな人との新しい出会いがたくさんあって楽しかったと語った彼女。
次の人生もきっとまた別の新しい出会いが待っていることだろう。
彼女の人生の一端に関われて本当に良かったと思った。
(女性弁護士の法律コラム NO.197)
2015年3月7日(土)は、日本弁護士連合会主催で、東京で「母子家庭における子どもの貧困を考える」シンポジュウムが開催された。
最近は、日弁連で開催されるシンポジュウムや研修会は、希望すれば、テレビ中継で視聴することができる。
3月7日も、京都弁護士会館で視聴することができた。
今回のシンポは、10月1日に千葉で開催される日本弁護士連合会の人権シンポジュウムのテーマ「女性と労働」のプレシンポとして位置づけられていた。
日弁連の両性の平等に関する委員会から基調報告がなされた後、国立社会保障・人口問題研究所の阿部彩さんからの基調講演があった。
阿部彩さんは、岩波新書で「子どもの貧困」と「子どもの貧困Ⅱ」という2冊を出版されており、その本は、私が昨年「子どもの貧困と学校給食費未納問題」を講演した時(2014年11月27日付けブログ)に、大いに参考にさせてもらった。
阿部さんは、最近のマスコミの傾向として「子どもの貧困」「女性の貧困」というテーマには注目するが、「母子家庭の貧困」というテーマには新規性がないと言ってあまり関心を示さない、でも根は共通であり、母子家庭の現状はますます悪化していると強調された。
特に10代で出産した母親の大多数は母子家庭となり、また若年出産の母の子どもは、母親が低学歴で配偶者がいないことのリスクにより、さまざまな不利益を受けているとの報告がなされた。
まだまだ私たちが知らない実態がたくさん存在している。
用があったので、その後のパネルディスカッションを視聴することができなかったが、今後も関心を持っていかなければと思った。
(女性弁護士の法律コラム NO.196)
安倍政権は、「高度プロフェッショナル制度」と名付けた労働時間の適用除外制度を新たに設ける労働基準法の改悪案を今国会に提出しようとしています。
これは、年収1075万円以上の人を対象に、労働時間にかかわらず賃金を定額にするというもので、労働者からは大きな反対の声が上がっています。
この制度は「成果に応じて働く」などと宣伝されていますが、現行労基法が定めている労働時間規制を全く取り払ってしまう、正に「残業代ゼロ」法案、「過労死促進法案」にほかなりません。
昨夜は、この制度をめぐって、BS11の「報道ライブ21 INsideOUT」という番組で、反対派の日本労働弁護団の佐々木亮弁護士(東京・旬報法律事務所)と推進派の八代尚宏国勢基督教大学教授との1対1での公開討論が放映されました。
佐々木弁護士も指摘していましたが、
この制度が適用されるには、
①労働者に一定時間以上の休息時間を与える
②一定時間を超えない健康管理時間を定める
③4週間を通じ4日以上かつ1年間を通じ104日以上の休日を与える
上記3つの要件のうち「いずれかの措置」を取ればいい、要するに1個やればOKなんです。
しかも、①②については、法律でなく、省令で定めるという内容ですし、③の「1年を通じ104日以上の休日」というのは、祝日・盆・年末年始も関係なく、週休2日程度で働くということなんですね。
テレビ討論は、明らかに佐々木弁護士が八代教授を圧倒していました。
八代教授の主張は、労働現場の実態、労働者が置かれている実態を全く知らないとしか言いようがありませんでした。
それにしても、八代教授の主張を、具体的な数字や事実を含め、とっさに反論する佐々木弁護士は、見事でした。
こんな制度は、絶対に導入させてはいけません。
(女性弁護士の法律コラム NO.195)
現在、担当している事件で、裁判所に提出する書面を書くにあたり、どうしても読んでみたい雑誌があった。
2009年に発行されたもので、出版社のホームページで探すと、「在庫なし」となっていた。
最近は本当に便利になったもので、京都市内の図書館に目的の書物が置いてないかどうかは、ネットで検索することができる。
結果、京都市内の図書館にはなし。
そこで、国会図書館なら絶対にあるはず、と思い、これもネットで検索。
幸運にも関西館にあることがわかった。
利用者登録をすれば、欲しいページをコピーして送付してくれるサービスもあるようだが、書面提出の期限が迫っており、あまり時間がない。
また、雑誌そのものを読んでみたい。
そこで、昨日、関西館に行った。
関西館は、京都府相楽郡精華町にある。
JR祝園(ほうぞの)駅か、近鉄新祝園駅から、バスで10分くらいの所。
かなり立派な建物だ。
中に入り、初めてなので、最初に利用者登録を行った。
10分くらいかかった。
その後、発行された利用者カードを使って入室。
開架図書でない場合には、書庫から出してもらわなければならず、利用者カードを使いパソコンで検索して申し込む。
パソコンをすぐには使いこなせなかったところ、係の人が親切に教えてくれた。
待つこと、約20分。
書庫から雑誌が到着したということが、パソコン画面に表示されるので、受け取りカウンターへ。
そして、必要なページを自分でコピーする。
すべての流れがシステム化され、初めての私にはドキドキ体験だったが、職員の方はどなたもとても親切だった。
目的の雑誌を実際に読み、これは裁判に使えそうと思ったところをコピーした。
行って良かった。
さあ、書面を書かなくっちゃ!
(女性弁護士の法律コラム NO.194)
元依頼者の方から突然、電話がかかってきました。
平成●年頃に私に依頼して勝訴判決が出たが、その判決が手元にあればほしいという内容でした。
当時、判決書を私から受領したが、今、どこにあるかわからないからということでした。
さすがに今から約20年以上前の記録は手元にはありません。
そこで、裁判所に、判決書は何年保存されるか尋ねてみました。
回答は、民事の判決書は「50年」保存されるということでした。
でも、判決書の数は膨大なので、判決を言い渡した年しかわからないと、探すのは大変だという返事でした。
そこで、「平成●年」の私の手帳の記載を探してみましたが、その元依頼者の名前は見あたりません。
それで、再度「平成●年で間違いありませんか?」と尋ねたところ、「平成になる前だったかもしれない」という返事でした。
再度、「昭和」からの手帳の記載を探してみました。
ありました!
その方と打ち合わせなどをしている年月日が書いてありました。
そこで、その年月日をお伝えしました。
その方は、裁判所に行かれ、当時のことがわかったようでした。
(女性弁護士の法律コラム NO.193)
私のブログで、これまでに何度も、ジュリーこと沢田研二のことを書いた。
(過去のブログについては、右検索欄に「沢田」と入力してお読みください)
ファンではなかったが、確かに、ジュリーは、私が子どもの頃、グループサウンズの中のトップアイドルだった。
そして、還暦を過ぎた今も、当時のグループサウンズの中では、ただ一人、現役シンガーとして活躍している。
還暦を過ぎた沢田研二が、憲法9条・平和や反原発などについて発言し、そのことを自ら作詞して歌っていることが新聞などで紹介され、私も嬉しくなって、このブログで何度も書いた。
そして、琵琶湖ホールでの沢田のコンサートや大阪ドームのタイガースの復活コンサートにも出かけた。
その沢田研二が、なんと、大阪弁護士会の会長石田法子さんと対談し、大阪弁護士会の広報誌に掲載されている(大阪弁護士会のホームページにも載っています)。
石田会長は、沢田と同じ年で、なんとタイガースの前身のファニーズ時代からのファンだそうだ。
あの真面目そうな石田会長からは想像できないなあ。
でも、よくよく見ると、どこか田中裕子さんに似てるような・・・
対談の主な内容は、なぜ沢田が還暦になって以降、平和など社会問題について発言をしているかなどから始まり、家庭内の家事分担や弁護士のイメージにまで及ぶ。
さすが石田会長。プライベートな部分までしっかり聞き出していた。
沢田は語る。(以下、抜粋)
「改憲」というのが出てきて、これはなんかやばいぞと思って、歌い手として何かできることはないかと思ってました。
左翼だろうが何だがろうがいい、自分の思ったことを歌にしただけ。
「我が窮状」は、9条を大切にしようよ、再びあんな時代が来るのは嫌だという思いで作りました。
原発稼働反対というのはニュースでは出すけど番組で誰も言えないというのはおかしい。
格好いいなあ!!
大阪弁護士会は、いいタイトルつけるね。
ホントに、「カッコイイジュリーから格好いい沢田研二へ」やわ。
京都にも来てくれへんかなあ・・・
(女性弁護士の法律コラム NO.192)
働く女性が妊娠や出産を理由に退職などの不利益扱いを強要されたりするマタニティーハラスメント(マタハラ)。
厚生労働省は、1月22日、マタハラが疑われるケースについて、雇用主への指導を強めることに決めました(2015年1月23日付け京都新聞朝刊)。
当事務所ホームページの法律コラム「最新判例」でも紹介しました、昨年10月に最高裁が示した「妊娠による降格は男女雇用均等法が原則禁止しており、本人の同意がなければ違法」との初判断を受け、厚生労働省は、同法などの解釈をめぐる通達を改正。
近く全国の労働局長に送るとのこと。
現在の厚労省の通達では、違法だと疑われるケースを「妊娠、出産などを理由とする不利益な取り扱い」としていますが、改正後は「妊娠、出産を契機とした不利益な取り扱い」という表現を加え、時間的に近接していれば、違法性が疑われると判断し、雇用主に積極的に報告を求めたり、助言や指導、勧告などを検討したりするとのことです。
2013年度、全国の労働局に寄せられたマタハラ関連の相談は約3000件。
しかし、訴えることもできず泣き寝入りしている人も多いと思われます。
今回の厚生労働省の指導強化は、マタハラ被害に遭った女性たちが声を上げたことが契機になっていることは間違いありません。
泣き寝入りせず、「おかしい」と声をあげていきましょう。
なお、京都弁護士会では、2015年2月21日(土)午後1時半から京都弁護士会地階ホールにて「マタニティハラスメントを考える」というタイトルでの講演会を開催します(参加費無料)。
最高裁で勝訴判決を勝ち取った広島の下中奈美弁護士や、ジャーナリストの小林美希さんらを講演者として予定しております。
是非、多数、ご来場ください。
(女性弁護士の法律コラム NO.191)
1月19日、京都市ひとり親家庭支援センターにおいて「離婚について」というタイトルで講演をしてきました。
昨年に続き2回目です。
一口に「離婚」と言っても、夫婦関係はれぞれ全く違うものですし、抱えている悩みも異なります。
ですから、私の話は「離婚について」の基礎的なことをご説明するという内容でした。
個別のご相談は、引き続き、午後に法律相談を行いました。
統計によると、2012(平成24)年度の離婚件数は22万2000組で、これは約2分22秒に1組が離婚していることなります。
近年の離婚の特徴で、最も大きな変化を感じるのは、子どもをめぐる問題です。
離婚あるいは別居後に子どもを養育監護していない親の方からの、子どもとの「面会交流」の調停申し立てが、2013年には初めて1万件を超え、10年間で倍増しています(2014年8月18日付け毎日新聞)。
少子化や男性も子育てに関わってきていることなどが背景にあると思われますが、他方では、離婚や別居の原因が配偶者の暴力(DV)にあって面会交流には親同士の難しい問題が含まれているケースもあります。
今回の受講者は、離婚を考えているという、比較的結婚期間の短い方が目立ちました。
基礎的なことをきちんと理解した上で、離婚に臨むことは大切だと思います。
そんな皆さんのお力に少しでもなれたら、と思っています。
(女性弁護士の法律コラム NO.190)
2014年12月26日の当ブログで書いた日本テレビの女性アナウンサー内定取り消し裁判は、本年1月8日、東京地裁で和解が成立した(毎日新聞2015年1月9日付け)。
報道によると、和解内容は、当事者である笹崎さんを「アナウンス部に配属予定の内定者」に戻すということで、笹崎さんは4月1日付けで入社する。
あきらめないで勇気ある闘いを決意し、短期間で内定取り消しを勝ち取ったことは、素晴らしい。
企業の中に入ると、また違った苦難があるかもしれないが、頑張ってほしいと思う。