(女性弁護士の法律コラム NO.249)
安倍首相主催の「桜を見る会」が国会で問題となっています。
私たちの税金を使って、自分の後援会の人たちをたくさん招待しているのだから、説明する義務・責任があるのは当然です。
招待者名簿も廃棄して、これもまた、うやむやにするつもりなんでしょう。
「私物化」もいい加減にしてほしい!と思います。
ところで、「桜を見る会」に「反社会勢力」が招かれていた問題で、菅官房長官は、定義はないと説明しました。
私がたまたま観たテレビのワイドショーの司会者も「概念があいまい」というようなことを言っていました。
でも、実は、国の正式な文書で、「反社会的勢力」は定義されています。
それは、2007(平成19)年6月19日付けで発表された「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針について」と題するものです。
この指針は、政府が閣議決定で設けた犯罪対策閣僚会議の幹事会が「申合せ」としてとりまとめたものです。
この指針には、「反社会的勢力」は、「暴力、威力と詐欺的手法を駆使して経済的利益を追求する集団又は個人である」ときちんと明記されています。
「反社会勢力とは 法務省」などという検索ワードを入力すれば、ヒットとしますので、ご覧ください。
また、このような反社会勢力によって国民が被害に遭っているにもかかわらず、西村副官房長官の「反社会的勢力のみなさま」という発言も、許しがたいものです。
きちんと責任を追及していきましょう。
女性弁護士の法律コラム
(女性弁護士の法律コラム NO.248)
9月7日土曜、35度を超える残暑厳しい京都市内で、日本弁護士連合会主催の「弁護士業務改革シンポジウム」が開催され、全国から弁護士が集まった。
場所は、同志社大学今出川キャンパス。
弁護士業務に関わる分科会が午前と午後合わせて11あったが、私は、午後2時から5時までの「『おひとりさま』支援における弁護士の役割」という分科会に参加した。
日本の総人口1億2671人のうち27.7%が65歳以上である(2017年)。
また、単独世帯中、65歳以上の単独世帯は、2015年現在32.6%を占めている。
私の依頼者の中にも、高齢で一人暮らしの方が少なからずおられる。
これまでのように単に「遺言」を書いて死後に備えればすむというような時代ではなく、「おひとりさま」は、今現在を一人で生きていくのに様々な問題を抱える可能性がある。
また、私自身としても遅かれ早かれ歩む道でもある。
そんな自分の人生と仕事との双方の関心から、この分科会を選んだ。
会場はほぼ満席。
まず、元朝日新聞論説委員の川名紀美さんから「ひとりで生きる、みんなで活きる~友だち近居、11年の現実」と題する基調講演があった。
川名さんは、一緒に住める女性を募り、集まった7人で勉強会を重ね、2008年9月から兵庫県尼崎市の新築マンションの中で「友だち近居」生活を送っている。
このことは、NHKでも放映されたことがあり、私もたまたまその番組を観ていた。
同世代の「おひとりさま」が同じマンションのそれぞれの部屋で生活し、互いに行き来したり、定期的に勉強会やイベントを開くというのは、理想的な生活のように感じていた。
但し、「互いの介護はしない」というのが約束事。
それでも、気にかけてくれる人が近くにいるというのは心強い。
健康等の理由で、互いの関係に変化があるのはやむを得ない。
次は、弁護士と社会福祉協議会の方からの実践報告、それに続きパネルディスカッション。
任意後見契約は、認知症等によって判断能力が低下した時点で効力が生じるものであるが、それまでの期間はどのような「見守り」契約ができるか、身寄りの無い人の入院時の身元保証契約はどうするか・・・「おひとりさま」が抱えるであろう問題点に弁護士としてどこまでどのような支援ができるか、どこの機関などと連携すれば良いかなどが紹介された。
とても勉強になった分科会だった。
(女性弁護士の法律コラム NO.247)
政府は、70歳までの雇用確保を努力義務として企業に課す方針を打ち出しましたが、他方、厚生労働省が2019年5月17日発表した18年の労災事故のうち、60歳以上は全体の26.1%に達しました(10年前は18.0%)。
65歳までの定年延長や全国的な人手不足を背景に、働く高齢者が増えていることが原因として考えられます。
(2019年5月18日朝日新聞朝刊)。
先日も、飲食業で働く友人が職場で滑って転倒し身体を強打したと言っていました。
幸いケガはなかったとのことで安心しましたが、私自身の転倒事故や、その後リハビリを受ける中で出会った人達の話を聞くにつれ、日常生活の至る所に危険はひそんでおり、過信は禁物、他人事ではないと思っています。
企業には、高齢者でも安心して働くことができる職場環境を作ることが求められています。
なお、高齢者であろうと、非正規雇用であろうと、仕事でケガをしたり病気になった時には、労災保険が適用となります。
使用者から「うちは労災保険に加入していない」と言われても、労災保険は強制適用ですから、申請しましょう。
(女性弁護士の法律コラム NO.246)
2019年5月1日に新天皇が即位することにともない、元号が変わります。
そして今日4月1日午前11時半過ぎ、新しい元号が「令和」であることが発表されました。
元号については、元号法という法律が1979(昭和54)年制定されましたが、この法律には条項が2つしかありません。
「1 元号は政令で定める。」
「2 元号は、皇位の継承があった場合に限り改める」
改元に伴い、新聞等で元号についての歴史などを解説したものをいくつか目にしましたので、以下、簡単にまとめてみました。
元号制度は、もともとは中国を起源とするもので、皇帝が時をも支配するという思想にもとづくものだそうです。
しかし、現在では、中国でも使用されておらず、時の始まりとしての元号を使用するのは日本だけと言われています。
元号が制度として確立したのは、701年「大宝」から。日本書記では、最初の元号は「大化」(645年)とされていますが、出土した木簡に大化と書いたものはないそうです。
改元も、必ずしも天皇の代替わりでなくても、何かめでたい時にもなされることが多かったようです。
後醍醐天皇は、在位21年で8回、孝明天皇は在位21年で6回改元しています。
また4天皇にわたり約100年間改元がなかった時代もありました。
江戸時代は、幕府の許しがなければ改元できなかったし、元号を決定したのも幕府だったそうです。
一世一元は、1868(明治元)年から始まり、1889(明治42)年の旧皇室典範で法制化されました。
逆に言えば、これは、「天皇は在位中に元号を改めてはならない」として、天皇が随意に改元することが禁止されたという側面を持つようです。
戦後、新憲法のもとで、旧皇室典範は廃止され、元号は法的根拠を失いましたが、1979年に前記の元号法が制定されたという経緯です。
元号法では、前記のとおり「元号は、政令で定める」と規定されており、天皇の関与はなく、発令主体は内閣です。
法案審議の際には、元号の使用を国民に強制するものではないとの政府答弁がなされています。
あらためて元号を考えると、今では「時代の区切り」としての意味しかないように思えます。
それも、マスコミが「昭和の時代」「平成の時代」と区切って、それぞれの時代に発生した出来事から特徴づけようとしているだけで、昭和から平成にかわった1989年に区切るべき何かがあったわけではありません。
それは今回も同じで、2019年4月と5月とで、私たちの日常に特別の変化はありません。
ですから、今回のこれだけの騒ぎには、マスコミがあおっているような気がして違和感を感じます。
私は、可能な限り西暦を使うことにしています。
これまで裁判所は元号だけを使用しています。ですから裁判所に提出する書面には、やむなく西暦と元号を併記しています。
裁判所は、例えば、金銭の長期の分割払いで和解する場合、30年後までの分割払いであれば、和解調書に「平成61年まで」のように記載し、西暦は絶対に記載しません。
西暦への読み替えが煩雑で、非常にわかりにくい記載方法です。
外務省などは、これからは原則西暦と考えているようで、国際化の今日、裁判所も西暦に変更してほしいと思います。
(女性弁護士の法律コラム NO.245)
女子テニスの大坂なおみ選手が、先日の全豪オープンで初優勝し、世界ランキングでも1位となるという快挙を達成し、日本中が歓喜にわきました。
テニスにはあまり興味のない私でも、試合結果が気になって、テレビを観てしまいました。
彼女のあのトツトツとした日本語でのインタビューに対する受け答えも可愛らしいですね。
そんな注目を浴びている大坂選手ですが、国籍はどうなっているのだろうと思ってしまううのは、法律家のサガでしょうか。
なぜかというと、日本は原則として二重国籍を認めないからです。
大坂選手は、日本人の母親とハイチ系アメリカ人の父親を持ち、生まれは大阪ですが、3歳からアメリカで育ちました。
日本の国籍は、国籍法という法律によって定められています。
国籍法2条で、「出生の時に父又は母が日本国民であるとき」「子は日本国民とする」と規定されていますので、母親が日本人である大坂選手は日本国民です。
また、アメリカの国籍法はよく知りませんが、大坂選手はアメリカ国籍も有しています。
よって、現在は、日本と米国の二重国籍です。
そして、日本は二重国籍を認めていませんので、国籍法14条1項によって「外国の国籍を有する日本国民は、外国及び日本の国籍を有することになった時が20歳に達する以前のときは22歳に達するまでに・・・いずれかの国籍を選択しなければ」なりません。
ですから、大坂選手は、現在は二重国籍なので、22歳となる今年10月の誕生日までにどちらかの国籍に決めることが求められているのです。
どの国籍を選ぼうと、彼女の人間性に変わりはなく、これからも応援していこうと思います。
(女性弁護士の法律コラムNO.244)
検察当局が、顧客情報を入手できる企業など計290団体についてリストを作り、内部で共有していることが判明しました。情報の大半は裁判所など外部のチェックが入らない「捜査関係事項照会」で取得できると明記されています(2019年1月4日付け京都新聞朝刊)。
私たちは、クレジットカード作成、ポイント発行、交通関係のカード作成などの際に、自分の個人情報を企業に与えています。
それによって、各企業は、膨大な個人情報を保有することになります。
但し、それはその企業に対して明らかにしたにすぎず、その情報が他に渡るなどとは思っていません。
しかし、今回判明したリストは、最高検察庁が捜査への活用を目的に、警察の協力を得て作成し、検察内部のサーバーに保管、随時更新しています。
顧客情報は、公共交通機関や商品購入の履歴といった個人の生活に関わるもので計約360種類もあります。カード作成時に提出された運転免許証などの写しや顔写真も含まれるとのこと。
しかし、「捜査関係事項照会」は、捜査当局が独自に企業側に出す要請にすぎず、捜査に必要かどうか裁判所などの外部チェックは働きません。取得後の使用方法も不明で、漏洩のリスクもあります。
憲法は、裁判所の令状に基づかない住居や書類、所持品への侵入、捜索、押収を禁じています(35条)。
上記のような検察の情報照会は、令状主義を定めた憲法に反していることは明らかです。
2017年には、最高裁が、捜査対象者の車に衛生利用測位システム端末を令状なく取り付ける警察の「GPS捜査」を違法と判断しています(「法律コラム:刑事」に掲載)。
令状なしの個人情報漏洩を禁止する厳格なルール作りが求められています。
(女性弁護士の法律コラム NO.243)
四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の運転差し止めを命じた広島高裁の仮処分決定について、広島高裁は、2018年9月25日、四国電力の異議を認めて同決定を取り消しました。
広島高裁は、昨年12月、阿蘇カルデラで約9万年前に起きた過去最大規模の噴火について「火砕流が到達した可能性は十分小さいと評価できず、原発の立地は認められない」と判断し、今年9月30日まで伊方原発の運転停止を命じました。
今回の決定は、昨年12月決定が差し止めの根拠とした、原子力規制委員会が安全性を審査する内規として策定した「火山影響評価ガイド」について「相当な正確さで噴火の時期と規模を予測できることを前提にしており不合理」と指摘し、「災害の危険をどの程度容認するかという社会通念を基準とせざるを得ない」としました。
その上で、阿蘇カルデラで破局的噴火が発生した場合、膨大な数の国民の生命が奪われ、国土は壊滅に至る被害をもたらすと認定するも、「具体的予防措置を事前に執ることはできない」とし、一方で、「発生頻度は著しく低く」、「国民の大多数はそのことを格別に問題にしていない」と断定しました。
そして、「破局的噴火で生じるリスクは発生可能性が相応の根拠をもって示されない限り、原発の安全確保の上で自然災害として想定しなくても安全性に欠けるところがないとするのが、少なくとも現時点におけるわが国の社会通念だと認めるほかない」とし、伊方原発の安全性は欠けていないというのが社会通念だと判断しました。
原発の安全性・危険性は、本来、科学的に判断されなければならないものではないでしょうか。
今回の決定は、噴火の時期や程度を予知できない限り、社会通念を基準に判断せざるを得ないと判断していますが、「社会通念」とは何か、また、なぜ「社会通念」が基準となるのかという根拠も示されていません。
しかも、裁判所が言う「社会通念」は、国が破局的噴火のような自然災害に具体的対策を策定していないことと国民の大多数がそのことを格別問題にしていないことのようですが、国の無策及び原発再稼働に反対する国民の大きな声を全く無視するものにほかなりません。
折しも9月27日は、4年前に御嶽山が突然噴火し、多くの登山者が犠牲になった日です。
また2016年10月には阿蘇山中岳第1火口で爆発的噴火が起こり、今年になっても3月には再び火口入山規制され(4月23日規制解除)、いつ火山の爆発が起こるかわからないというのが現状です。
そのような予測不可能な事態を認定しながら、「社会通念」で原発「安全」と認めてしまうのは、やはり原発再稼働の「結論ありき」だったとしか考えられません。
(女性弁護士の法律コラム NO.242)
豪雨の後の京都は、連日、40度近くの猛暑日が続いている。外を歩くと、溶けてしまいそうな暑さである。
京都市内の各区役所では、毎週水曜日午後に無料法律相談が行われている。
昨日は、区役所の無料法律相談の担当日だったので、一番猛暑の時間帯に出かけた。
午後1時過ぎから午後3時過ぎまでの時間帯に6人の相談者の相談を聞かなければならないので、区役所の担当者から「一人20分でお願いします」と釘をさされる。
しかも、相談開始から15分経過すると、担当者が「あと5分です」と声をかける。
ゆっくり相談を聞くことができないのがつらいところである。
昨日の相談の中で印象に残った女性がいた。
その70代後半の女性は、借家の借り主で、家主から、突然、老朽化を理由に明け渡しを求める手紙が届いたとのことであった。
夫は既に亡くなり、娘らも独立し、長年住み慣れたこの家で一生を終えようと思っていたところに、家主から明け渡しを求められ、途方にくれていた。
娘さんが家主と交渉するようだったので、家主側の「老朽化」という理由は、なかなか認められるわけがないので、とりあえず「明け渡しはできない」と回答をし、家主の出方をみるようアドバイスをした。
一人で年金だけで生活しており、これから他に家を借りられる所もなく、長生きしたからこんなことが起こるのか、もう死んでしまいたい、などと目に涙をためて言われた。
法テラスを利用すれば、弁護士費用は立て替えてくれるので、弁護士に依頼することもできることを説明したが、たとえ分割でも返済していかなければならないので、そんな余裕はないとも言われた。
法的には大丈夫かもしれないが、今後家主が何をやってくるかわからないという不安な気持ちが抑えられないのであろう。
自治体の住宅などの公的な施設やサービスがもっと充実していたら、彼女のような心配もしなくてもよいのに・・
弁護士が受ける法律相談に楽しいものがあるはずもないが、暗い気持ちになった。
法律相談中、外はどしゃぶりの夕立だったが、終了して帰る頃には、雨は上がっていた。
雨上がり後のあまり涼しくないムッとする空気の中を、暗い思いで帰った。
(女性弁護士の法律コラム NO241)
麻生財務大臣が、2018年4月17日の記者会見で、財務省の福田事務次官のセクハラ疑惑の事実調査を「公平性のため」「第三者」の弁護士に依頼したと述べた。
その弁護士というのは、財務省の顧問弁護士だという。
政治家が使う「第三者」という言葉。どこかで聞いたような・・・・
そうそう、当ブログでも書いたことがあるが(2016年6月13日付け)、2016年、当時の舛添東京都知事に政治資金問題が起こった時にも、舛添氏は「第三者」である弁護士という言葉を何回も使用した。
弁護士は、依頼者から着手金や報酬等を受領して、その依頼者のために働くのが主な仕事なのだから、どう考えても「第三者」ではあり得ない。
財務省の顧問弁護士は、財務省からお金(国民の税金だが)をもらってるんだから「第三者」ではないのは当然だ。
政治家や弁護士本人がどう思っていても、少なくとも社会は「第三者」とは見ないし、見えない。
政治家は、日本語の使い方を間違っている。
(女性弁護士の法律コラム NO.240)
今年1月末に、私の郷里の岐阜に住む友人と3月に大学卒業を控え就職も決まった娘さんと3人で食事をする機会があった。
その際、娘さんが昨年春、自転車に乗っていて車と衝突し負傷するという交通事故に遭ったこと、加害者側保険会社が医療機関に支払っていた治療費が昨年12月で打ち切られたこと、示談がまだ未解決であること等を聞いた。
友人は、これからどのように加害者側保険会社と交渉したらよいかわからないと困っていた。
私の友人は車を所有しているので、私は「あなたが掛けている車の任意保険に弁護士特約はつけていない?」「もし、つけているなら、娘さんの自転車事故にも利用できるかもしれないので、適用があるかどうか尋ねた方がいい」「そして、弁護士特約が利用できるなら、弁護士費用は、あなたの任意保険会社が出してくれるから、弁護士に頼んで示談交渉をしてもらった方がいい」などとアドバイスした。
そのようなやりとりの中で、娘さんが大学時代、奨学金を借りており、事故の示談金が入れば、3月下旬までの期限に、借り入れた奨学金の元本の返済の一部に充てたいという気持ちを持っていることもわかった。
まもなく、友人から、弁護士特約が利用できることがわかった、ついては、私に依頼できないかという連絡があった。
事故現場は岐阜市内で、私たちの距離が京都と岐阜で離れていることが気にかかったが、娘さんから話をあらためて聞くと、示談での主な争点が慰謝料であることがわかったので、受任することにした。
どんな事件でも受任した以上、打ち合わせは、面談が原則である。
ただ、この件は、例外的に、郵便・FAXそして主にはメールと電話で打ち合わせをすることにした。
娘さんからは、できれば3月下旬の奨学金返済期限に間に合えば嬉しいという要望も寄せられた。
正式に受任したのがもう2月に入っていたので、その時点では、3月下旬までに解決するかどうか不明であった。
インターネットなどには書かれてあるサイトがあるが、一般的に、交通事故の示談交渉の場合、弁護士に依頼しないで当事者が交渉する場合の慰謝料の金額と弁護士が交渉する場合の慰謝料の金額(弁護士基準)とは、後者の方が高額になる。
だから、弁護士特約があれば、弁護士への着手金や報酬は保険会社が支払うので、私は友人に「弁護士特約が利用できるのであれば、弁護士に依頼した方が良い」とアドバイスしたのだ。
私は、娘さんから、交通事故にあって負傷して大変だったことや困ったこと等(慰謝料の事情)を可能な限り詳しく聞き取り、加害者側保険会社の担当者と何回か交渉した。
その結果、3月始めには示談が成立し、示談金の支払いも奨学金返済期限に間に合わせることができた。
友人と娘さんから喜んでもらい、私も役に立てて良かったと思う。
娘さんには、ほんの少し、大学卒業と就職の「お祝い」となったかな。
(女性弁護士の法律コラム NO.240)
10月27日、京都弁護士会で開催された刑事弁護講演会に参加した。
若い頃には刑事弁護も数多く担当したが、現在は、刑事弁護事件は持っていない。
でも、今回の講演会は、警察によるGPS捜査事件で最高裁判決を獲得した亀石倫子弁護士(大阪弁護士会所属)の講演だったため、どのような弁護活動をして最高裁判決にまで至ったかとても興味があり、参加することにした。
講演のタイトルは「刑事弁護は社会を変える」。
これから法曹になっていく司法修習生の研修の1つとしても位置づけられていた。
亀石弁護士は、コメンテーターとして、時々、テレビで見かけるが、実際に話を聴いたのは、初めて。
就労経験はあるものの、まだ30代で、弁護士経験は7年という若手だ。
以前にブログでも書いたことがある(ダンスの)クラブ風営法違反事件にも弁護団の一員として関わっていたことを知った。
新聞報道されるような裁判事件の場合、新聞では判決の結論(勝訴あるいは無罪)しか報道されないが、弁護士としては、どのような訴訟活動をしたか、どのような証拠をどうやって入手したかなどが気になるところである。
GPS捜査事件でも、警察がGPS捜査をしていることについて、どのように資料を収集し、争っていったかの話が勉強になった。
ただ、弁護士としてもっと大切なことは、直感的に「GPS捜査がおかしい」として争うという感性や意欲を持っているかどうかだと感じた。
亀石弁護士だったからこそ、最高裁まで争ったのであり、これが他の弁護士であったならば、もしかしたら、スルーされたかもしれない。
例えば、これまでに社会的に注目された、公害事件、薬害事件、無罪事件などでも、やはり「これは、おかしい」という弁護士の感性と行動がなければ、行政や司法の壁は破ることができなかっただろう。
単に法律書を読むだけでなく、世の中で起こる様々な事象に目を向け、自分自身の感性を磨いていくことが弁護士に求められる姿勢だとあらためて思った。
※GPS捜査違法事件については、当事務所のホームページの「最新判例:刑事」で紹介しています。
(女性弁護士の法律コラム NO.238)
裁判所で争われている事件で、次回の期日を決める時、裁判官から「●月●日はどうですか?」と聞かれ、その日に他の予定が入っている場合には、私たちは「差し支えです」とか「大阪で別件の裁判が入っており差し支えです」などと言う。
その「差し支え」という言葉が、2017年7月3日付け京都新聞朝刊の「デスク日誌」によると、新聞記者にとっては「法廷で飛び交う慣れない言葉」だと知って意外に思った。
記者は、「その日は既に予定があります」とは言わず、「差し支えです」と言うのが、日本語としておかしいと書いていた。
でも、もう何十年も「差し支えです」に慣れきっている私には、なんで日本語としておかしいかよくわからない。
「差し支えがあれば、言ってくださいね」
「差し支えがあるので、行かれません」
って、使うよね。
「差し支え」はあるのか、ないのかであって、「差し支えです」と言うのがおかしいんやろか。
私たち法曹が書面に書く言葉で、「にわかに措信しがたい」(=とうてい信じられない)という言葉があるが、このような使い方は、一般市民の人にはわかりにくだろう。
また、面会交流のことを「メンコウ」と略して言ってた若い家裁の裁判官がいたなあ。これは、アカンやろ。
でも、「差し支えです」は、何がおかしいかわからん。
今度、日本語教師をしている友だちに尋ねてみよう。
(女性弁護士の法律コラム NO.237)
昨日は、NPO法人「京都面会交流ひろば」主催で、面会交流に関する講演会と「京都面会交流ひろば」の説明会が開催されたので、参加した。
講演は、二宮周平立命館大学法学部教授による「面会交流支援の方法と課題」。
二宮先生には、これまで夫婦別姓問題や、児童扶養手当の非嫡出子に対する差別裁判など、私が弁護士になった頃から色々とお世話になってきた。
久しぶりに聴くお話だったが、とりわけ、カナダにおける面会交流の支援の具体例が興味深かった。
次に、NPO法人「京都面会交流ひろば」の活動についての説明がなされた。
親が離婚した場合、子どもの面会交流について家裁で調停成立あるいは審判が下されても、親同士の感情的な対立が続き、面会交流がスムーズにいかないケースが少なくない。
そんな時に、スタッフが面会交流に付き添ったり子どもの受け渡しを支援する活動を行う。
このような面会交流を支援する活動を行う民間団体が全国で少しずつ増えており、また兵庫県明石市などは自治体が行っているので、利用も無料である。
これまで京都近郊では、大阪の「エフピック」という団体しかなかったため、京都にもあればと思っていたが、2016年10月にこの「京都面会交流ひろば」が設立され、実現した。
役員は、元家裁の調査官、元家裁調停委員、元裁判官、弁護士、税理士など。
二宮先生は顧問。
スタッフとして実際に活動するのは、役員や現役の調停委員。
受付は、電話のみで、火・木・土の午前11時から午後3時まで。
支援期間は、原則1年(有料)。
詳細は、「NPO法人京都面会交流ひろば」のホームページで。
まだ設立されたばかりで、利用者は多くないそうだが、子どもの面会交流にとって、とても有益な取り組みである。
(女性弁護士の法律コラム NO.236)
犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ「テロ等準備罪」を新設する改正案が、2017年5月23日、自民・公明・維新などの賛成多数で、衆議院本会議で強行可決された。
対象犯罪は277にも及び、2人以上で犯罪を計画し、1人が下見などの「準備行為」をすれば、計画に合意した全員が処罰される。
実行後の処罰を原則とする刑法の体系が大きく変わる。
すなわち、目でとらえることができる犯罪の「着手」ではなく、目では見えない「内心」によって処罰が可能となってしまうのである。
日本弁護士連合会も各地の弁護士会も、会をあげて反対意見を表明し、街頭宣伝、集会、パレードなどのとりくみを行っている。
政府答弁では「一般人は対象にならない」としているが、他方、「捜査の対象」になれば、一般人ではなくなることも認めている。
2017年5月24日付け京都新聞朝刊に、作家の雨宮処凛さんが興味深い投稿をされていた。以下、簡単に紹介する。
2008年、「麻生邸ツアー」を企画した。当時の総理大臣だった麻生氏の私邸が渋谷にあり、敷地だけで62億円の豪邸だというので見に行こうということになったという。
同年9月リーマンショックが起こり、翌年1月には「年越し派遣村」が出現した時で、海外でも、格差を実感するために、このようなツアーがあることを知って企画された。
ところが、渋谷駅で待ち合わせをし、50人ほどが歩道をぞろぞろと麻生邸に向かって歩き始めて5分。突然、3人が逮捕された。
東京都公安条例の「集団示威行動」に該当するという容疑であった。
結局3人は、12日間も勾留され、自宅や関係先が家宅捜索された。
格差社会に疑問を持つ貧しい人が、総理大臣の私邸を見に行こうという意思を持っただけで「犯罪者」として逮捕される。
「共謀罪」がなくとも、このような無法がまかり通るのである。
3.11以降、この国では「声を上げる人々」が多く路上に繰り出すようになり、国会周辺には何度も10万人規模の人が集まっている。
「政権に都合の悪いことを言うやつらは徹底的に取り締まりたい」そんな政権の思惑がちらつく。
共謀罪は、この国の民主主義を破壊するものである。
雨宮さんが挙げるケースのように、誰もが、国や自治体などの政策などに不満を持ち、声を上げよう、行動しようとしただけで、もはや、その人は「一般人」ではなくなり、「犯罪の対象」となってしまうのである。
国や自治体への不満だけではない。大企業への不満も「対象」になりうる。例えば、岐阜県大垣市では、風力発電施設の建設に反対する市民の情報が警察によって収集されている。
共謀罪の審議は、参議院へ移る。
反対の声を上げましょう!
(女性弁護士の法律コラム NO.235)
昨日、京都市ひとり親家庭支援センターで「離婚について」というタイトルで、お話してきました。
これまで、毎年、この時期に講演に行かせていただき、今回が3度目になります。
参加対象は、京都市在住のひとり親家庭の親となっていますが、現在、まだ離婚はしておらず、離婚を考えている人も参加は可能です。
離婚についての基礎的な知識などを、私が担当した事件の経験も織り交ぜてお話ししました。
2016年人口動態統計によると、2015年の離婚数は21万7000組で、これは2分25秒に1組の夫婦が離婚していることになります。
また、最近は、子どもの面会交流を求める調停が増加しており、これは、少子化や父親も育児に関わる機会が増えていることが背景にあると思われます。
終了後は、あらかじめ申込みをされた方の法律相談を行いました。
離婚を考えた時には、事前に正確な知識を得ておいた方が良いですね。
お気軽にご相談ください。
(女性弁護士の法律コラム NO.234)
今日から年賀はがきの受付が始まった。
今朝の京都新聞で、「お年玉付きくじ」付きはがきを国に提案したのは、京都の男性であったことを知った。
国は、提案には乗り気でなかったが、男性の熱意が勝って世界初のくじ付きはがきが1949年12月に発行されたという。
国が当初反対した理由の1つは「賭博的で射幸心をあおる」
それから67年後の2016年12月14日。
与党自民党や日本維新の党などの賛成多数により、カジノ法案が強行採決され、成立した。
カジノは、現行刑法の賭博罪(185・186条)に該当する。
そのカジノを、国が率先して導入したのである。
刑法の教科書(大塚仁著)には、賭博罪について「偶然的事情によって財物の獲得を僥倖しようとする行為を内容とする犯罪である」と書かれてある。
そして、「私有財産制度のもとでは、自己の財産を任意に処分することは、本来、各人の自由に委ねられているところであり、・・・別段、罪悪とするにあたらないようでもあるが、一面、これら偶然の事情によって財物の獲得を僥倖しようと争う行為を容認するときは、国民の射幸心を助長し、怠惰浪費の弊風を生じさせ、健康で文化的な社会の基礎をなす勤労の美風をそこなうばかりか、さらに、暴行、脅迫、殺人、傷害、窃盗、強盗、詐欺、横領その他の副次的な犯罪をも誘発し、ひいては、国民経済の機能に重大な支障をきたさせるおそれがある」と指摘されている。
競馬や競輪なども「賭博罪」に該当するが、「公設、公営、公益のため」「法令に因る行為」として違法性が阻却されてきた。
ところが、今回は、民営カジノが合法化されてしまうのである。
「カジノ」は、人が負けることによって潤うものにほかならず、刑法の教科書に書かれてあるとおり、勤労意欲を低下させ、挙げ句の果てには、犯罪にまで走らせる恐れがある。
30年以上も弁護士業をしていると、仕事柄、ギャンブルで人生を狂わせた人をたくさん見て来た。
破産申請をしても、免責(=借金支払が免除されること)決定が受けられないかも知れないことを悲観して、自殺した人。
競馬にはまって借金が増え、その借金を返そうとまた更に馬券を買う・・・そしてついには、会社の金にまで手を出して横領罪で処罰を受け、刑務所に入った人。
親がギャンブルに手をつけて負債を抱え、子どもと親子断絶してしまった人。
人は、強い意志を持つ人ばかりではない。
たとえ意思が弱い人でも、夢のある健全な人生を送ることができる社会にするのが、国の役目ではないだろうか。
もう、こんな政治は、ヤメにしよう。
(女性弁護士の法律コラム NO.233)
自衛官の息子を持つ北海道千歳市の50代の母親が、自衛隊の南スーダンPKOへの派遣は憲法違反として、国に対し、派遣差し止めと撤退などを求めて、札幌地裁に提訴しました(2016年12月1日付け赤旗)。
南スーダンPKO派遣問題で、自衛隊員の家族が訴訟を起こしたのは初めてです。
安倍政権が新たに付与した「駆け付け警護」の任務は、12月12日から実施可能とされています。
原告である母親は、今回の派遣は、本来任務である「国土の防衛」から逸脱しており、一母親の立場から疑義を唱えるべく行動を起こすことにしたと提訴の理由を語っています。
「普通の母親なら自分の息子が危ない状況に立たされた時、だれもが持つであろう気持ち、その1点で行動しています」と。
稲田大臣のたった7時間の南スーダン滞在で、どうして「安定している」などと言えるのでしょうか。
11月に青森から自衛隊が南スーダンに出発して以降も、次々と南スーダンの現状の危険性、いつ戦闘となるかわからない状況が報道されています。
自衛隊員が他国の人を殺し、あるいは殺されてしまう危険性は極めて現実的になっています。
20万人の自衛隊員の命と家族の悲痛な思いの上に、「駆け付け警護」の新任務などの違憲性を問う重要な意義を持っている裁判です。
(女性弁護士の法律コラム NO.232)
2016年7月8日付けの当ブログ「雪山登山の失踪宣告(危難失踪)事件調査の旅(東北そして東京)」で紹介した、東北の雪山に平成27年1月一人で登り、そのまま還らぬ人となったKさんの失踪宣告事件。
原審の家裁が危難失踪を認めなかったので、高裁に抗告していましたが、昨日、危難失踪を認めるという決定が届きました。
普通の失踪宣告は、生死が7年間明らかでないとき、請求により家裁が行いますが、この「危難失踪」というのは、戦地に行ったとか、沈没した船の中にいたなどの危難に遭遇した者の生死が危難が去って1年間明らかでないときに行われます(民法30条)。
原審の家裁は、雪山に登って還らないことは「危難」にあたらないと判断しました。
高裁段階からこの事件を受任しました。
今年7月には、東北まで出かけて、捜索にあたった地元の方の話を伺ったり、同時に、Kさんが行った山にも雨が降る中登りました。
また、Kさんが勤務していた東京の会社関係者にも面談し、お話を伺うことができました。
その甲斐があったというものです。
「早く気持ちの整理をしたい」というご両親の気持ちにも応えられて良かったです。
Kさんが亡くなられて来年1月で丸2年が経過します。
来年早々には、再び、地元の方々への報告とお礼もかねてその地を訪れ、Kさんにも裁判の報告とお参りをしに行きたいと思っています。
なお、決定の内容などは、また「法律コラム」の方で紹介します。
(女性弁護士の法律コラム NO.231)
「また、電通か!」という思いで一杯です。
2016年10月7日のニュースで、広告会社大手の「電通」に勤務していた女性新入社員(当時24歳)が昨年12月25日自殺し、それが長時間の過重労働が原因だったとして労働災害が認められたことを知りました。
「電通」という会社は、日本でも最大の広告代理店です。
私たち過労死や過労自殺を扱う弁護士にとっては、2000年3月24日に最高裁が言い渡した「電通事件判決」はバイブルのようなすぐれた判決で、過労死事件訴訟では必ずと言ってよいほど、その判決の内容を書面に引用したりします。
実は、電通では、1991年にも入社1年5ヶ月の男性社員が長時間労働が原因で自殺しました。
年齢も今回と同じ24歳でした。
遺族が起こした裁判で、最高裁は、従業員の過労自殺に関わる民事上の損害賠償請求について、因果関係を初めて認めたのです。
最終的には、会社が約1億6800万円を払うとの内容で和解が成立したそうです。
そして、今回。
報道によると、亡くなった女性社員について労基署が認定した1ヶ月の時間外労働は、約105時間にものぼったそうです。
会社は、2000年の最高裁判決をどのように受け止めていたのでしょうか?
命の重みがわからない企業の体質に憤りを禁じ得ません。
折しも、同じ7日、厚生労働省は、過労死の実態や防止策の実施状況などを報告する「過労死等防止対策白書」を初めてまとめました。
過労による犠牲者を出さないよう、国はもっと指導監督や法的整備を行うべきです。
(女性弁護士の法律コラム NO.230)
「完全失業率」という言葉を聞いたことがあると思います。
ちなみに、1~3月期の完全失業率は、3.2%です。
完全失業率とは、「完全失業者数」を「労働力人口×100」で割ったもので、総務省統計局が発表する雇用情勢を示す代表的な指標です。
簡単に言うと、働きたい人(労働力人口)のうち職がなくて働いていない人の割合を示すものです。
「完全失業者数」というのは、
①調査期間中(月末1週間)に就業していなかった
②就業する意欲がある
③調査期間中に就職活動や開業の準備をしていた
という3つの条件を満たしたものと言います。
よって、月末1週間に少しでも仕事をした人などは、それ以外の期間、仕事に就いていなくても完全失業者に含まれません。
また、仕事が見つからないため求職活動を断念した人や、育児や介護のため仕事に就けない人も除かれています。
従って、実際の失業者率は、もっと高い数値になることは明らかです。
ところで、先頃、内閣府は、不本意に非正規になっている労働者や求職活動を断念した人を含めた「広義の失業率」を試算した結果を発表しました。
それによると、1~3月期、8.4%にのぼることがわかり、わが国の雇用の実態は、はるかに深刻であることがわかりました。
この試算では、完全失業者に加え、過去1年間に求職活動をしたことがあるものの、適当な仕事がなかったり、出産、育児、介護などのたmねに仕事を続けられそうになかったりして、求職活動をやめた人も失業者に含めています。
さらに、正社員になれず、やむなく非正規の職に就いた労働者も加えて、「広義の失業率」を算出しています。
アメリカの失業統計では、「広義の失業率」が発表されています。
わが国も、雇用の実態を十分把握できるような統計を取るべきです。